中島岳志『血盟団事件』を読む

血盟団事件

血盟団事件

 「一人一殺主義」という言葉で検索したら、血盟団が出てきた。ぼんやり、名前くらいは聞いたことあるかもしれない。そうか、日本にもいろいろなテロリストたちがいたんだ。せっかく夢を見たんだから、なにか本でも読みたい。井上日召。井上昭の昭を分解して「日召」。草「弓剪」剛みたいだ。すごいモダン。読むしかない。

一人一殺主義 - 関内関外日記(跡地)

 4年ほどまえにおれはこんなことを書いた。本書が出たのは今年のことである。その後、二、三冊戦前の右翼についての本を読んだが、井上日召は後回しになっていたところがある。
 理由はといえば、法華経、南妙法蓮華経だからだ。表層を舐めただけで、おれには仏教のなにもわかっちゃいないのだけれど、どうも日蓮は面白くない。おれのなかでは、北一輝が傾倒するのも見て見ぬふりというところがある。
 が、本書を読んでいくらかイメージが変わった。日蓮がどうというより、時代というものが法華経に……なんといったらいいのか、マッチしたとでも言うべきか。そういうところがある。
 井上日召にしても最初からガチガチの日蓮主義者だったわけじゃない。この世のありようについて疑問を抱き、大人は答えず、キリスト教やいろいろの思想遍歴を経て(関係ないけど高畠素之と同級生なのな)、悟りに至る。至ってみれば、加持祈祷のできるカリスマ坊さんとして大洗(今話題の!)の電鉄会社に使われるようになったりもする。して、だんだんと『血盟団事件』は井上日召の話から離れていく。事件が、手から離れていく。井上に心酔するもっと若く、もっと性急なものたちの話になっていく。このあたり、北一輝にも似て……という印象。
 と、印象もなにも北一輝も重要人物であるし、西田税なんてのもはもっと深く関わってくる。あと、ちょっと触れられていて「えっ」と思ったのは、小沼正が身を寄せていた日本国民党というのがあって、それが分裂するんだけれども、その分裂した一派がやろうとしたのが大船に観音教教会を作り、でかい観音像を作り、学校を作り、国家維新のための人物を育てようとしてた……って、まあいいや。
 いや、それよりも出てきた名前でおれの注意をひいたというか、そうなのか! とおもったのが権藤成卿だった。権藤成卿から四元義隆の流れがあって、四元が戦後日本のフィクサー、中曽根大勲位をはじめとした大物の指南役いたってところで。
 そうすると、権藤成卿の「社稷」の思想が一つ日本の戦後にあって、あるいは今もそうなのやもしらぬ。そして、「社稷」の対極にあるのがなにかといえば、制度主義的というか、あるいは純正社会主義的なものであるのかもしれず、と。社会福祉制度ではなくある種の共同体、あるいは家族で面倒を見なさいという思想が、今の自民党にあんのかなぁ、とか。しかし、時代も情況もすべて違っていて、おれも『自治民範』(古本屋で五千円で売ってた。まあ井上も読んで、これは破壊後の建設の話であって、ようわからんし知る必要はない、みたいな感想だったらしいが)読んでねえし、やっぱ違うかな。小沼とかは権藤のは中国のだって言って、まあ日本主義の立場から批判しててね。うーん。わかんね。
 さて、「血盟団事件」だが……、本書を読んだらなんとなくわかるぜ。うん、たぶん。そして、現代と当時との似通ったところ、そうでないところとか、いろいろ考えはする。たとえば今、財閥富を誇れどもとしても、君側の奸を斬るっていったって、ねえ、とか。まあ、そんなところで。

関連>゜))彡>゜))彡>゜))彡

……本書でも血盟団(この名称は自称じゃないのね)の若いのから安岡正篤が見くびられている話が何度か出てくる。

……小沼正が主役格だからすげえ映画だ。