- 作者: L=F・セリーヌ
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1981/11/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: L.F.セリーヌ,高坂和彦
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 1981/11/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
……その証拠に例えばこの眠りだが、諸君に分かって貰うためには……十四年の十一月以来、私は瞬間的にしか眠らない……耳鳴りの奴とも折合いをつけた……そいつがトロンボーンになったり、オーケストラんなったり駅の操車場んなったりすんのを聞いてるんだ……そいつはまるで賭けみたいで!……敷布団の上で身動きするとか……ちょっとでも苛立ちの徴しを見せようもんなら、もう最後、気が触れちまいそうな騒音だ……
という佐村河内セリーヌ先生、亡命三部作の二作目『北』を読んだ。読んだ? 読んだというにはページをめくるのが速すぎるって? いいんだ、おれにはおれの速読があるんだ。おれが読んだと思えば読んだんだ。そう言いはってやる。
楽しみは短く、その分だけ苦労に際限はない……苦労なしには生きてけない、悲しい洒落だ……赤子の初めての悪夢から末期の汗までただもう苦しみの連続だ……そうして幕が降りる!
ペシミズム万歳! あわれなセリーヌ。間違ったカードを選んじまったセリーヌ。でも、それは対独協力の前からずっと、この世に対して……なにかが違うんだって、そう感じてたんだろう。
《あの点点点さえなけりゃ、あいつのいわゆる“わが文体”も、そうさ、もうちっとは読まれるんだろうが!……そもそも『旅』ん時からもう読めたもんじゃない!……
そこんところを抑えてるから、ケツに銃殺刑の判決貼られても生き延びて、作品を発表できた。たぶんそういうこったろう。おれには文体が『旅』からあと変化してるかどうかもわからんけどさ。
……藁屋根の家並み……なんでも直ぐに《うち》んなっちまうことは……どんな嫌なことでも……馴れちまうのさ、安らぎが欲しいんだ……監獄ん中だって同じだ、房を変えられると、元の房が懐しい……他処へ移すってのは酷なもんだ……別の穴に……
それでもう、わりともう、セリーヌの愚痴も聞き飽きたぜっていうのも本音なんだけどさ。
恰度マドモワゼル・マリーがやって来た。私の秘書だ……どう思うか彼女に訊いてみた……
《そうですね……先生の本は……『旅』から後……
―『旅』から後?
……あまり期待なさらない方が……
そんでもおれは全部読むって決めたんだよ。道順通りか、寄り道しながらか、『リゴドン』に向けて……。
>゜))彡>゜))彡>゜))彡
- 作者: セリーヌ,Louis‐Ferdinand C´eline,生田耕作
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 文庫
- 購入: 11人 クリック: 224回
- この商品を含むブログ (75件) を見る
- 作者: セリーヌ,Louis‐Ferdinand C´eline,生田耕作
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/12/01
- メディア: 文庫
- 購入: 9人 クリック: 44回
- この商品を含むブログ (51件) を見る