ストライクウィッチーズのSEGAラッキーくじでなんか一番いいの当たったんだけど、やっぱり俺はなにか持ってるのだろうか?

 劇場版『ストライクウィッチーズ』に備えて別命あるまで待機中のおれだが、待機していてはストライクウィッチーズのためにならぬと思い、関連情報の載っているアニメ雑誌やコミックスなど買ったりしている。その中で、コンビニで引けるラッキーくじなるものをやると知る。

 セガラッキーくじ、これである。ローソンではなくファミリーマート。しかも、限られたファミリーマートにおいてやるという。店舗検索の結果、関内駅近くの、場所は知っているが普段まったく使わないコンビニで実施していることを知る。俺は2月の前半から、「3回引くぞ」と心にじっと決めてこれを待っていたのである。

 さよう、俺は「けいおん!!」の一番くじの一等を一回で引き当てた男である。今回も一回でいいのではないか? いや、違う。それは違うのだ。なにが当たるのかではない。いくら買うかなのだ。俺の『けいおん!』に対するそれを1とするならば、『ストライクウィッチーズ』は3になる。俺はそう思ったのである。作品への愛着という点で3倍の差があるかというと、そこまでの幅はなかろう。ただ、『けいおん!』は半ばメジャー的な作品ともいえ、より大勢の人間が愛しているといっていい。むろん、『ストライクウィッチーズ』を愛する同志も少なからずおるとはいえ、その数けいおんに及ばぬのは言うまでもないだろう。劇場版についても、みなとみらいだけで3つもシネコンがあるのにどこでもやらず、ららぽーと横浜か川崎か上大岡(←増えた?)のどこかに行かねばならん。……ってこのあたりは相当ぜいたくな話だ、地方のファンには怒られるだろう。
 まあともかく、1に対して3。こう心に決めていたのである。しかし、一方で、俺には逡巡というか、不安もあった。なにせ、「パンツじゃないから恥ずかしくないもん」と言われたところで、それがコンビニという非常に明るい照明の中で恥ずかしくないもんであるかどうか、ということである。ひょっとしたら、『イカ娘』のときのように、恥ずかしいから買えないもん、になる可能性もある(『イカ娘』の場合、行きつけのコンビニ過ぎて……という理由もあったが)。そんな思いを抱きつつ、「3月上旬」というあいまいな日程に対して「もう上旬だよな」と思いつつファミリーマートに向かったのである。三十過ぎの男の苦悩がここにある。まだ真冬のような寒さ、曇った日曜日の午後のことである。
 で、結果として"【A賞】宮藤芳佳 ハイグレード水着フィギュア"当ててしまいました。A賞は一枚目のくじで、レジのおばちゃんの反応はきわめてクール。「あら、A賞」というだけだった。残りの2枚は"【E賞】マグカップ"と"【G賞】まめフィギュアコレクションDX"。
 とりあえず少し大きめのレジ袋一枚持ってカウンターから出てくる。出てきて、宮藤とリーネのフィギュアを前にして「どちらにします?」などと言う。そう、おばちゃん、同サイズのフィギュアゆえにA賞とB賞の差が付いていることに気づいていないのである。ここで俺は「宮藤はfigma持ってるしな」(←さすがに高いフィギュアを買うほど金はないのでこれくらいだが)などという不埒な発想から「リーネちゃんください!」と言うこともできたであろう。しかし、それではウィッチたちへの信義にもとるのである。「こっちで」と宮藤を指さした。おばちゃんが用意したビニール袋は、フィギュアの箱でいっぱいになった。マグカップとまめフィギュア用にもう一枚カウンターから袋を持ってきてくれた。俺は頬をバラ色に染めて、両手をストライクウィッチーズいっぱいにして、帰路についた。

 しかし、これではっきりしたが、やはり俺はなにか持っていると言わざるをえない。たしかに今回は3倍のくじを引いた。とはいえ、一番いい賞を引き当てた上に、ダブりがない。生涯でこの手のくじをやるのは二度目なのに、両方共一番大きな商品を手に入れた。やはり俺は持っている。なにか持っている。天にいるだれかさんに愛されている。あるいは、『けいおん!』や『ストライクウィッチーズ』への愛が運命の必然となって現れたとしか言いようがない。ここに「じつはこの手のくじってわりとでかいの当たるんじゃねえの?」などという疑念を挟もうという気は起こらない。実に、起こった通りのことが起こった。これは俺に遠方から、スポラディックE層などを経由して(季節的に違う? どうでもよろしい)、「まだ死ぬな」というメッセージを送ってきてくれているに違いないのである。悪くない。ストライクウィッチーズ、弥栄!

 失敗者は失敗の必然を、成功者は成功の必然を欲する。だが、ひとびとはなぜそうまで必然性を身につけたがるか。言うまでもなく、それは自己確認のためである。自己がそこに在ることの実感がほしいのだ。
『人間・この劇的なるもの』福田恆存


 ちなみにミニフィギュアはサーニャだった。これは会社に飾ることにした。マグカップもエイラーニャの柄であった。よく見るとエイラーニャとカールスラント三人組のいずれかを選べるようになっていたが気づかなかったが、そこは偶然に委ねるところでかまわない。