深町秋生『デッドクルージング』を読む

デッドクルージング (宝島社文庫)

デッドクルージング (宝島社文庫)

2015年、東京。富裕層と貧困層の格差が拡大し、脱北者の無条件受け入れを開始した日本。企業は不良少年らで民兵集団を組織し、民兵・晃らはミッションのもと、中国人が集うクラブを襲撃。偽ドル札作りの天才・劉の拉致に成功した。一方、クラブの襲撃により、脱北者の売春婦として生活していたヒギョンが命を落とした。ヒギョンの姉、ファランは妹の死体を前に、ある決意をする…。

 読み始めは脳内にプロディジーの「Smack My Bitch Up」の有名な部分がリピートしていたが、途中から映画『凶気の桜』のサントラが入り込んできたりしつつ、骨太の韓国映画のようでもあり、バッタバッタと登場人物が斃れていくところに八神瑛子よりずっとターミネーター的に強まった女が出てくるわなんだで、ガッと読みきれる一作。
 そんでもって、なにかこう、近未来というか、再来年、あるいはもう始まっているような東京、この今現在の閉塞感が、さらにラーメンが獣臭くなった末の舞台ってのがいい。貧しく、腐っていく一方で、オリンピックやろうとしているあたりの、これを弾丸で穴だらけにして、爆弾でふっ飛ばしたいという、そこんところがいい。それと、どこかしら国道感あって、そんで、ええと、そんな一方で、まだ普通に暮らしている人々もいて、というような。
 ところで、その都市や階級の対比とか、絡み合う組織とか、いろいろの経歴の人物たちとか、いろんなもん詰まってて、いい言い方をすれば贅沢。悪く言えば詰め込みすぎ……てるのを、切り落としてるからスピード感はあるんだけど、みたいな。というか、切り落とすというとやっぱり拷問シーンなんだけど、この人体欠損への恐怖を呼び起こさせるような描写はいいな。いや、痛いの嫌いなんだけど、拷問ったらそんくらいのもんじゃなきゃアカンという気はする。あとはスーパーセックスがなかったかな。あれ、どっから出てきたんだスーパーセックス。まあいいや。
 それで、すごく変な話をすると、胸糞わるい現代なんてもん、言葉でふっ飛ばしちまえみたいな、ああ、そういうのアリか、みてえな、そういうよくわからんアレだアレ、そういうのがちょっとなんかああなったんだ。それじゃ。

>゜))彡>゜))彡