『高地戦』を観る〜絶望&絶望の仁義ある戦い〜

※少しネタバレしているかもしらんけん

 公式サイトを今はじめて訪れ、予告編をはじめて見たが、予告編で語りすぎているような気がする。これは『高地戦』にかぎった話ではないけれども、DVDなんかで本編を見終えたあとにおまけ収録の予告編なぞ見ると「そこまで予告されていたのか!」と、ネタバレに妙にびっくりすることもある。ただ、今の今までなにかの映画を見ながら「予告編で知ってるよ、それ」とか思ったこともないのも事実である。
 さて、『高地戦』。おれは少し遠回しな言い方をすれば「朝鮮戦争最後の戦闘」という、その部分に惹かれてジャック&ベティまで出向いたといっていい。ただ、見ながら思ったのは、「最後」の意味するところと、上映時間を知らないで行きゃもっとすごかったかな、というところ。おれは腰と背中が痛くなるので上映時間は気にするし(133分という数字はちと長く見えた)、上映中たまに時計をチェックする悪いクセがある。
 などとくどくど言ってる時点でどんでん返しがあると言っているようなものだけれども、しかしそれほど事前情報を知らないながらもそれをおれが知っていたので「どんでん返しじゃないんじゃね?」という思いもあり。たとえば映画批評? 評論? なんかは、事前情報、宣伝のありようまでを射程に入れているのかどうか。一観客がこうやって感想文を書きつけて不特定多数に晒す、というところでも、ちょっとは悩むところである。
 ただ、しかし、いずれにせよおれが求めていた骨太の戦争映画を観られた、満足した、ということははっきり言っておく。少し長いかな? と思ったし、やや要素詰め込みすぎかな? という点もあるけれども、だれたり飽きたりする瞬間というのがほとんどない。弛緩と緊張の繰り返しのあんばいがいいのだろう。
 それに、登場人物たちみないい味を出している。正直、韓国映画の俳優の名前とかよく知らんのだけれども……主役よりも脇役がよかったな。いや、主役を食うというわけでもねえだろうが、いや、しかしあの鼻がシャキーンと三角形の若き大尉なんてのは相当なもんでしょ。あれはかっこいいし、その過去もすげえ。味方を鼓舞するために死物狂いの一席ぶつところ、あそこで「ウォー!」ってなる説得力がある。
 あとは、ちょっとひょうきんな古参兵から、ガチガチの新兵に、もう半ばおかしくなってしまっている「まだら」状態まで、戦争映画の役者は揃っているといえる。主人公といえば、防諜部から半ば左遷的に任務を帯びて……というところで、『硫黄島からの手紙』っぽさもあり、と。ただ、その友人のイケメンさんなんだけど、回想シーンでメガネかけてて、再会したらかけてなかったんだけど、視力大丈夫なんか? というか、そのせいで最初同一人物かどうかちょっとわかんなかった。
 あとは、北朝鮮の渋いおっさん。あれ、あんた、あの学徒ものの『戦火の中へ』に出てきた人? とか思ったけど、まあわからん。そして、北側といえば「2秒」。おれの後ろに座ってたおばさんが「あっ」と声を出した2秒後に銃声がすることから「2秒」の二つ名のついた長距離射撃手。これ必見。スナイパー映画じゃないけど、スナイパー映画かよ? くらいの魅力がある。
 とはいえ、やはり総力戦、消耗戦が舞台。『二百三高地』と変わらない(脚本家つながりで、最近ハマって見ていた『仁義なき戦い』だと広島死闘篇あたりか、などと思ったり。しかし、「これで米軍の45口径が買える」あたり、時代はつながっている、か。いや、それが出てきたのは完結編だったか)。しかも、「30回までは覚えています」というくらい取ったり取られたりを繰り返している激戦地。死体でできた山。それにあの人海戦術で襲ってくる人民解放軍に、米軍の支援爆撃(P-51だろか。ツインムスタングは見かけなかった)。
 ……と、ともかく戦争映画で、『プライベート・ライアン』よりあとのリアルさがあって、それゆえにあまり直接的でないメッセージ性もあり、こいつは強ええやって思ったわ。おしまい。

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