おれは医者に行くとわりと饒舌になるほうだ。「医者と患者」というように立場がはっきりしていると、わりと平気で話せる。もう少しくわしく言ってしまえば、金を払うので「おれはここにいていい」という安心が前提にあればこそ、それなりの会話ができるということだ。そうでないと、あとはこの世で3人か4人かくらいとしか、すらすら話せない。それ以外だと、所謂キョどることになる、かもしれない。
と、思っていたら、この間の受診では自分でもおどろくほどに口が回らなかった。言わなくてはいけないことがあった。朝の異様な眠気だ。
それが、うまく喋れないし、医者がなにか言ってることに、うまくリアクションを取れていないという感じなのだ。あれ? けど、思いあたる節がある。
「ああ、あと、なんですか、自分では、起きたあとのことで、出社しますよね。それで、どきどきもないし、調子、いいと思ってるんで、落ちついてるのはあるんですが、まわりから、会社の、ちょっとぼーっとしてるみたいに、言われて、朝の眠いのとか、SASみたいなのはないんですけど……」
みたいなことを切り出してみた。そして、帰ってきたのがタイトルの台詞というわけ。ああ、そうですね、と。
結局、眠気に関しては様子見というようなことになった。メイラックスを割って飲めみたいなことだったかと思う。薬局ではアモバン苦いでしょう。あれは胃からさかのぼってくるんですよ。そこで、苦味を抜いた新薬が……あるのどうの言われたが、やはりぼーっとしていて、「べつに苦くてもいいや」とか頭で思って生返事というか、そんな感じだった。
そんな調子で、半年に一度あるかないかの外での打合せ、しかも朝、なんてことがあって、おれはその日とりあえずメイラックスを飲まなかった。枕元にカフェイン剤と水を用意して寝た。カフェインの錠剤はしばらくぶりだったのでよく効いた。そのかわり動悸がひどくなった。その日は乗り切れた。動悸はひどくなった。
で、その後、朝の強烈な眠気はどうなったか。餌を食ったあと15分のタイマーをセットしてまたベッドにのぼるようなことはなくなった。今朝は『あまちゃん』もひさびさに見た。あのバスでは上野へ行けない。先週、先々週では考えられなかったことだ。やはり脳の調子の波なのだろうか。面倒なので、メイラックスは割っていない。かわりに、夜は食後どころか食前の早さで飲むようにしている。週末に実験して出した結論。周囲との認識の差については……とりあえず知らね。