劇場版『魔法少女まどか☆マギカ 新編 叛逆の物語』を見上げる


 台風前夜。ネットで予約状況を確認する。深夜零時からの上映がある。ソールド・アウト。深夜二時台からの上映がある。売り切れ寸前。どうやって行くんだ。どうやって帰るんだ。いったいどうなっているんだ。
 おれがようやく予約した席は一列目のど真ん中だった。大スクリーンの劇場、本当の最前列。おれの人生経験にないシート。どうせなら見上げてやろう『まどマギ』新編。
 それは、予想以上だった。予想以上に見上げるものだった。なぜ見せられるのか映画とは関係ないCM、納得はできる予告編、いずれにせよものすごい角度。そしてでかい。圧倒的。これが最前列。二度と取るのはやめよう。
 予習しようかと思った。予習というよりは、盛り上げるための準備。なぜかすばらしい『ストライクウィッチーズ』は別として、ある時期ハマった『けいおん!』にしろなんにせよ、時とともに冷めるところがある。それを温めなおす。さて、おれが『まどマギ』を見ようとすると……、テレビのHDD。最終回でも見ようとすると、9話で終わっている。日付、3月5日。その後に大きなことが起きた。おれは録画の方法を変えたのだろう。
 その空気を伴って出向いた、といったら嘘になる。普通に出向いた。台風の影響は少なかった。おれはスクリーンを見上げた。こないだ映画館に来たときは眠りこけるという失態を犯した。今度はそうなるまいぞ。ワルプルギスのチェリーコークを一口。用を足すために途中退場するまいぞ。
 その心配は無用だった。見上げたスクリーンの中、魔法少女は踊った。魔法少女は歌った。魔法少女は躍動した。ある種の不自然さ、予告された不幸の中で。奇妙なティーパーティー。仰角を忘れておれは見入った。見入ったが、画面全体をしっかり追えていないこともわかった。後ろの席で見たい、円盤で見たい。雑念。
 やがて来るその世界の秘密。ベベ。魔法少女は銃を撃った。撃って、撃って、撃ちまくった。躍動するマミさん。さらに続く確信への道。さやか、杏子……! 
 そして大展開、「……新房さんから、ある意見をうかがって「ああ、そうか!」と方向性がはっきりしたんです」(「娘TYPE10月号、虚淵玄発言より)とはこのことかどうか。その方向性に向かって。
 結果として世界の構図は安定すらしたように思われる。色合いがそう見せる。ほむらの世界の中のまどかがほむらのまどかそのものなればさもありなんという選択の結果。その情念、相手が情を解さぬものゆえに、あえて口にしたのだろうか。暁美ほむらの物語。敵らしい敵こそおらなかったが、喪失と獲得、ヤマ場もあった。おれは飽きることなく最後まで見た。
 半月の判決。ラストシーンの意味はおれにはわかりかねる。もういちど見せろ。何度でも見せろ。それだけの熱をおれは持ち帰る。背中の痛みも持ち帰る。次があれば、最前列は避けようと思って。
 

……まあ、劇場版も見ておったわけですが。

……アルティメットほむほむ? があったらほしい、ような。