『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』の後編を見たような……

 シネコン行きの登りエレベータ内のことだ。階と階の間、エレベータが動いているときに、小学生低学年くらいの女の子が、開閉ボタンなどをカチャカチャいじっていた。そこで彼女を連れていた母がぴしゃりと一言、「まどか、やめなさい!」。そしてエレベータに乗り合わせた、おれと、おれと同じ映画を見に行くであろう男たちの間になんらかの空気が流れた。その母子がなんの映画目的だったかはしらない。『アウトレイジ・ビヨンド』だったかもしれない。本当の話である。
 まどかはありとあらゆる場所に遍在し、いろいろの時代のいろいろの魔法少女に出会った。ある宇宙の魔法少女たちは決まってスカートを履いていなかった。「なんでパンツなの?」と聞くと、きまって「パンツじゃないから……」とつぶやいて円環の理に還って行った。
 ラヴレンチー・ベリヤのリムジンに下校中の女子中学生が連れ込まれる。「君のお父さんの名前と職業は? このことを君が話したら、どうなるかわかるね? わかるかい? 右翼=トロツキストブロックの反ソヴェート的陰謀を事前に防ぐためには、同志スターリンへの絶対的忠誠心、革命的警戒心、そして第二次性徴期の少女のエネルギーが必要なのだ! さあ、脱ぎたまえ!」魔法少女ヴェーラ・イヴァノーヴナ・ザスーリッチのソウルジェムは濁りきっていた。今にも魔女になりそうだった。
 「全世界同志! この人間社会の歪みを糾すべき重責をただ魔法少女だけが担ってきたというべきであろうか? 今後も担わせるべきであろうか? これは悪しき個人崇拝として排除されねばならなぬ。人民の敵、悪しき専制、これらを打倒してきたのは、名もなき農民であり、機械工であり、炭鉱夫であった! 今こそ、魔法少女を解放し、われわれがわれわれの中に巣くう悪しき帝国主義自己批判し……」
 おれはクラリスの「コネクト」を大音量で聴きたいと思ったので、それが唐突とも思えるぐあいにはじまったときは内心で拍手喝采だった。ほむらが爆弾の自作するのを見て、いったい何人の社会革命党戦闘団の技師がその扱いの失敗で爆死しているのか、体が木っ端微塵に吹っ飛んだら、巻き戻せないぞ、などと思う。雷酸水銀の取扱いには注意が……いやそんなもの使わないか。
 意識を巻き戻していたら、続編をやるという。そういうつもりだったら早く言ってくれ。いや、言わなくてもいい。どっちでもいい。片をつける必要があるのならば、そうしなければいけない。十牛図のまだ途中というのならそうかもしれない。いずれにせよ、おれはもうすこしいろいろ言ったりやったりするマミさんを見たいので、そういうことにしておいてくれ。
魔法少女まどか☆マギカ 巴マミ (1/8スケール PVC塗装済み完成品)

今年映画館で見た映画は、
『恋の罪』『ヒミズ』『国道20号線』『サウダーヂ』『天皇ごっこ 見沢知廉たった一人の革命』『劇場版ストライクウィッチーズ』もう一回『劇場版ストライクウィッチーズ』『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』(舞台挨拶つき)『トータル・リコール』『アイアン・スカイ』『魔法少女まどか☆マギカ 前編』に続いて13本目。今後も日曜日は映画館→図書館という習慣を続けてもせいぜい一年間で20本いくかいかないかか。