葉山ノー・ゴー

 前日の夜までは自転車で葉山あたりまでサイクリングすると心に決め、脚の毛もしっかり剃ったりしていたのだが、当日朝になって空が曇ってる。おれ一人だったら即時に「ノー」、中止のところ。実のところおれがGIANT ESCAPE R2を譲った女を誘ってのことだったので、相談の形で連絡してみると、どうも向こうは「ゴー」の気まんまんだった。おれは、おれのもあんたのもタイヤは雨で死ねるやつで、おれはメガネだから水滴でさらに死ぬし、空模様を気にしながらの運転で三機目も死ぬからゲーム・オーバーだと説得した。説得の結果、電車と徒歩とバスで当該地に行くことになった。
 結果として、軽く雨に降られた。そんな中を疾走するロードバイクを何台か見たが、おれには自信がない。おれの決断は正しかったと思いたい。
 さて、逗子から葉山あたり、しばしば来ているとは言いがたいが、目新しい場所でもない。今回の発見は、葉山御用邸の砂浜側に皇宮警察の警備が一人いることくらいだった。もはや冬の海といっていい水は澄み、おれはなにかの骨を拾って帰路についた。それだけのことだった。