断片400文字

砂糖でできた丘陵が延々とつづく。歩くとサクサク音がする。おれはメッセンジャーバッグを開く。印鑑とお薬手帳と死亡申込書を確認する。ときおり風が吹き抜ける。空には雲ひとつない。太陽がどこにあるかは見えない。あたりは明るい。朝か昼かわからない。

遠くになにかが見える。おれは前進をやめない。それは樹だった。もっと近づく。それはカキノキだった。カキノキはやわらかな緑色の新葉を、今まさに開こうとしているところだった。どこにあるかわからない太陽がそれを照らしていた。おれはメッセンジャーバッグの中からペットボトルの水を取り出して、飲む。また歩き始める。

また、遠くになにかが見える。建物のように見える。おれは砂糖を踏みしめながら前進する。それはレンガでできた小さな家だった。人の気配はなかった。おれは確信を持ってドアを開け、中に入った。木のテーブル、椅子が4脚。そのうちのひとつにおれは腰掛け、肘を枕に寝てしまう。