野尻抱介『太陽の簒奪者』を読む

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

太陽の簒奪者

太陽の簒奪者

 ハードSF、だ。おれは理系の話にまったく暗いのに、ハードSFが好きだ。たといその作品のハードさの中に脆い点がいくつ空いていたとしても、おれには気づくことができないからだ。ずっぽりと世界に入り込むことができる。おれはハードSFが好きだ。
 『太陽の簒奪者』は……、どこからどこまで紹介すればいいのだろうか。SFファンと呼ばれる人たちにとっては、もう今さら説明を要するような作品ではない、のだろう。しかしおれはSFファンとも言えないし、『太陽の簒奪者』面白かったぜ! と言いたいのだ。どこまでが明かしていいアイディアなのだろう。万が一、この紹介で手に取る人がいるのならば、できるだけクリーンで、フレッシュな状態で読んでもらいたい。読者が6人か7人くらいの日記書きでも悩むことはある。
 ……そうだ、公式(?)の紹介文を紹介すればいいのだ。上のAmazonの商品解説より。

西暦2006年、水星から突如として噴き上げられた鉱物資源は、やがて太陽をとりまく直径8000万キロのリングを形成しはじめた。日照量の激減により、破滅の危機に瀕する人類。いったい何者が、何の目的でこの巨大リングを創造したのか?―異星文明への憧れと人類救済という使命の狭間で葛藤する科学者・白石亜紀は、宇宙艦ファランクスによる破壊ミッションへと旅立つが…。新世紀ハードSFの金字塔、ついに文庫化。

 いいねえ、スケールでかいねえ。ここのところ第二次世界大戦中のヴィシー政権側に与してしまったフランス人の愚痴ばかり読んでいたので、わっと広がる感じだね。8000万キロくらい広がるね。8000万キロ、おもしれえじゃん。でかいのはいいことだ。いったい何者が、というのがわからないのもいいなあ。『リングワールド』、『宇宙のランデヴー』、『虚無回廊』……いろいろ思い出される名作。ただし、内容ははっきり覚えていない! でも、それでいい! きっと『太陽の簒奪者』もその列に加わって、おれの偽りの太陽を取り囲むにちがいない……。

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 この本の文庫本の解説(もう一人、谷川流も書いてる)をしている、この人のこの記事を読んで、どれか読みたくなったから手にとった。SFファンを名のれるまで、あと7999万冊くらい読めばいいのだろうか。