野尻抱介『ベクフットの虜』を読む/クレギオンシリーズ読了

ベクフットの虜 クレギオン7 (ハヤカワ文庫 JA)

ベクフットの虜 クレギオン7 (ハヤカワ文庫 JA)

 クレギオンシリーズ最終巻。とはいえ、このシリーズそれぞれ独立していて、どれから読んでもいいですよ、というのは本当。というわけで、前作の終わりがシリーズの終わりと勘違いしてしまったくらいなのだが。とはいえ、本作も終わりらしい終わりを迎えてくれる。そのうえ、これが終わりなのではない、豊穣なSF世界への入り口なのだ、というような印象さえ受ける。……おっさんとして読んでも楽しめるが、若いうちに読んでいれば、また違う印象もあっただろうか、とも思う。まあ、おれが若いうちに読んだところで、理系完全壊滅の脳みそでは、人生を変えられるようなことはなかっただろうが。ただ、そんな脳みそでも、このシリーズは科学のバックボーンがしっかりしているんだろうな、と思わせるなにかがある。おれのようなものが読んだり見たりして「さすがに物理的にこの挙動はおかしい」と思えるSFなどありゃあしないだろうが、「そう思わせるなにか」が「正義や友情でなく心の優しさを前面においたスペースオペラ」の背後にある。それはとてもいい感じだと思う。いい感じだ。
 あと、これはこっちの事情だが、6作品をハヤカワ文庫JAというので読んで、7作目だけは富士見ファンタジア文庫のを読んだのだけれど(事情は察せよ)、なんか挿絵が違う……。というのが、わりと読書する上で気になったりして、挿絵って結構重要やなーと思ったりした。おしまい。