- 作者: リチャードブローティガン,高橋源一郎
- 出版社/メーカー: 思潮社
- 発売日: 1991/11
- メディア: 単行本
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なにもかもが完璧なような気がしたので
なにもかもが完璧なような気がしたので
ぼくたちは車を止め
そして外へ出た
風が優しく君の髪をなぶっていく
こんなにも単純なことだったのだ
ぼくは向き直り
きみにいま話しはじめる
We Stopped at Perfect Days
We stopped at perfect days
and got out of the car.
The wind glanced at her hair.
It was as simple as that.
I turned to say something-
……ときたらどうする。どうするといっても困る。困るが、感じるところはある。言いようのない不安がある。完璧な日なのに? なにか裏側にあるような気がする。わりと知っている言葉と、あまり馴染みのない言葉を通じて、おれはそう感じる。なにもかもが完璧なんてあるのだろうか?
脅えた蟻がこわごわきみの様子を窺っている
脅えた蟻がこわごわきみの様子を窺っている
友だちになりたいんだ
少年の頃のきみのことならなんでも知りたいんだ
いっしょに泣きたいんだ
そして
きみと生きていきたいんだ
The Alarm-Colored Shadow of a Frightened Ant
The alarm-colored shadow of a frightened ant
want to make fried of you, learn all about
your childhood, cry together, come live with
you.
あれは幼稚園に入ったか入る前のことだった。おれは庭にレジャーシートをひいて遠足ごっこをした。蟻に噛まれて、指の先からちょっぴり血を流した。おれは蟻に泣かされた。そんなことを思い出した。この詩で蟻がなんの比喩だとか、どんな韻を踏んでいるのだとか、そんなことは聞かないでくれ。
こんな人生ばっかりなんだよな
こんな人生ばっかりなんだよな
二日酔い
すべてがいい加減
孤独
これでは寝ていた方がましだよ
漂白した猫のクソみたいな人生
Too Many Lifetimes like This One, Right?
Too many lifetimes like this one, right?
Hungover, surrounded by general goofiness,
lonely, can't get it up, I feel just like
a pile of bleached cat shit.
漂白された猫のクソ、というのがおれにはひっかかる。おれはあまりクソが好きじゃないんだ。かといって、cat shitといわれては、猫のクソだろうなあ。もう一度いうけれど、おれは下品なのは好きだけど、ゲロとか、ションベンとか、クソとか、あんまり好きじゃないんだ。おれは上品なのかもしれない。きっとそうだ。
死につつあるきみが最後に思い浮かべるのが溶けたアイスクリームだとしたら
そうだな
そういうのが人生かもな
Melting Ice Cream at the Edge of Your Final Thought
Oh, Well, call it a
life.
まあ、そういうことかもな。リチャードさんよ、けっきょく自殺のときになに考えてたんだ? ま、いいや。それじゃ。
>゜))彡>゜))彡>゜))彡