……結局おれはなにを観てるんだ? 『てさぐれ!旅もの』

 女性タレント4名が富士急ハイランドに行き、観覧車や絶叫マシーン、脱出ゲームやお化け屋敷を楽しむ。ついでに大喜利コーナーなどの要素もある。とくに番組自体にゲーム性もないし、ドッキリもない。
 ……こんな番組を夜の7時だか8時だかに地上波で放送されていたら、はたしておれは観る気になるだろうか? 断言するが、ならない。チャンネルをいくらか変えたあと、テレビを消してフリードリヒ・グラウザーの『モルヒネ』でも読み始めることだろう。いったいそんなテレビのなにが面白いんだ。せいぜい富士急ハイランド静岡県でなく山梨県にあることを知って「そうだったのか」と思うくらいのものだ。
 が、しかし、これが『てさぐれ!部活もの』のスピンオフだったらどうしますか? ということだ。チャンネルを合わせるどころか、金もないのに数か月前からDVDを予約して、届いたその日の夜に2回ぶっ通しで観た挙句、次の日も休んで1日中ぶっ続けで見ようかということになる。
 なんだこれは?
 おれはアホ面下げてテレビ画面を観ながらそう思わずにいられなかった。おれはどういうところにいるのだ。おおよそテレビのバラエティはつまらんし、出ているタレントもよう知らんし(たとえば「ベッキー」の顔と名前は知っていたが、芸能界におけるポジションをわかっていなかったので、先の騒動の大きさにはポカーンとするばかりであった)……。
 ん、そこか? 「知っている」が強いのか? 『てさぐれ!』3年。荻野可鈴も成人した。例のポーズにはもう飽きるくらいに大人になった。西明日香はりっぱなベストフンドシストになった。アニメ2期にスピンオフ1期。積み重なったキャラの重みがある、ネタの数がある。おれはそれを知っている。知っているから面白いのだ。当たり前か。
 それでもって、やっぱりおれが冒頭で「つまらん」と思ったバラエティのロケというのは、やはりそれなりに完成された代物なのかな、などと思ったりもした。競争と淘汰のテレビの世界で「ある程度こういうもの」となった以上、こういうロケはそれなりに面白くなるものだ、と。蛭子能収が路線バスに乗る、というトリッキーさがなくったって。うーん、どうだろうか。
 とかいいつつ、なんだかんだいって、この4人組が面白いのだ、と結論づけたいところもある。お化け屋敷でなぜか平然とイケメンだったヘゴに、ひたすら参ってた荻野可鈴、安定感の西明日香に、なんかイケメン(ふつうに美人、でいいか)の明坂聡美(観覧車がダメで、フジヤマがオーケーというのは、高所恐怖症のおれにはよくわからなかった)……。これが何年かの試練を経たうえで互いのキャラを知り尽くし(観ているおれも知っていて)、下ネタの底は抜け……。いや、本当に下ネタの底が抜けてたな、これは地上波あかんかも、というか、夢アド! アイドルにはあかんやつ違うんか、というか。夜の撮影は少し寒そうだったけど、それでなんかおかしくなったんか? 
 ああ、やっぱおもしれえよな。大喜利の答えが用意されていても、まあ、なんでもいいんだ、おもしれえからいいんだ。今晩も見よう、そうしよう。ニコニコ動画で予告編も見返そう。そして故・石ダテコー太郎先生の復活ともにアニメ3期を願おう。……アニメ? もう実写でよくね? いや、しかし、どうなんだ?
 というわけで、『てさぐれ!』は手探りつつよくわからないところに来ている、ような気がする。この境地がアニメの展開として完全に「新しい!」……のかどうかはしらないが、どう展開していくのか見守りたい。個人的には『旅もの』の続編は続編で観てみたい。今度はメンバーのだれも行ったことのないところで、それでなんか……まあ、おれにはなにが面白いかわからなくなっている。おそろしい、おそろしい。