『ダンケルク』のどこがすばらしいのか?

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まず、この表を見てもらいたい。

  ブリトー 戦艦 必殺技 出演俳優
バトルシップ チキン 簡単に沈むか! ドリフト 自分の吹き替えを下手だと認める
ダンケルク × × × ×

代表的な戦争映画である『バトルシップ』との比較である。これを見る限り、『バトルシップ』の方が優れた映画のように思える。だが、おれが人に問われれば『ダンケルク』のほうが素晴らしいと答えるだろう。不思議な話である。

ダンケルク』は寡黙な映画である。印象的な台詞と言えば、「おれの兄貴は空軍でボールトンポールデファイアントに乗って3日で戦死した」(うろ覚え)くらいのものであろう。それなのに、細かな、現場の(べつにルントシュテットが出てきたりはしない)描写の積み重ね、プロットの積み重ねで圧倒してくるのである。これという強敵もいなければ、達成しなければいけない大作戦もない。ただ、大陸の兵隊たちをイギリス……あの白い壁、アルビオンに送り返す。スピットファイアはBf109(エンドロールではMe109の表記を採用していた)に火を吹かせる。兵士たちはとにかく逃げる、それだけの話だ。だれがどうだとか、英雄的な働きをしたとか、そういう話じゃないんだ。新聞に「英雄」と書かれたのはだれか、それが多くを物語っているだろう。

と、まあそれはともかく、といいたい。圧倒的なIMAXである。4Dかと思わせる音量とその振動である。これはともかく映画館で、できればIMAXで体感するべきだ。そう、体感に近い。戦場の体感。これである。あまり血しぶきもなければ人体破損もない。それでも、これだけの迫力がある。おそるべし、だ。ああ、そして、なにより、あのラストのスピットファイアの美しい姿。あれだけでも観る価値がある。本当に、言葉にできない良さがある。

結局のところ、中途半端なミリタリー好きの、そういうところに落ち着くのか? と言われたら、おれについてはそれまでだ。それまでだが、やはり戦争映画というものについて、『プライベート・ライアン』以後というものが存在するように(するよね?)、『ダンケルク』以後というものができるかもしれない。そんなことまで思ってしまったのであった。以上。

 

アドルフ・ガーラント『始まりと終り』を読む - 関内関外日記(跡地)

彼は、われわれの隊について要求することは何かとたずねた。メルダースは、もっと強力なエンジンを装備した一連のMe-109が欲しいといった。その要求は受け入れられた。「それで、きみは?」とゲーリングは私に向かっていった。私はためらわずにいった。「自分の隊にスピットファイアを装備してもらえればと思います」いってしまったあとで、私はかなりのショックを受けた。そういったのは本音ではなかったのだ。もちろん、基本的に私はMe-109の方がスピットファイアより好きだった。だが私は、司令部の理解の欠如と頑固さにひどく頭を悩ましていたのだ。そこから与えられる命令は、われわれには罪のない幾多の欠陥のために遂行できなかったし、やれたとしても不完全にしかできなかったのだ。私の厚顔かぶしつけな言葉に、ゲーリンクは唖然とした。彼は足音も荒くその場を立ち去り、歩きながら罵りの声をもらしていた。

なんとなく思い出したエピソード。Bf109の航続距離が問題になるのはバトル・オブ・ブリテンだが。あと、ホーカー・ハリケーンも言うほどスピットファイアに劣っていたわけではないとか(目的が違ったというのがあるか)。