平成三十年 年頭所感

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エメラルドゴキブリバチはゴキブリの脳を操り、生きたままわが子の餌とする。まず第一歩脚のあいだに一撃を加える。これによってゴキブリは一時的に麻痺する。そのタイミングを見計らい、二ヶ所の神経節に毒液を送り込む。確実に二ヶ所の脳の部位に送り込む。

ゴキブリは身繕いをする。エメラルドゴキブリバチは触覚を切断し、ゆっくりとしか動けなくなったゴキブリを、わが子を産み、育てるに適した場所に誘導する。そして、卵を産み付ける。ゴキブリはゆっくりと生かされたまま、エメラルドゴキブリバチの幼虫に食われ、死ぬ。そしてまた、新しいエメラルドゴキブリバチが巣立っていく。

お前はエメラルドゴキブリバチか?

おれはゴキブリか?

おれは脳に神経毒を注入されてはいないだろうか? 触覚を切断されては居ないだろうか? ゆっくりと、誘導され、恐怖心も感じられないまま、食われ、死ぬ。生きたまま、新鮮なまま。

今日も誰かが誰かの脳神経に毒を注入している。わからないまま連れてこられて、生きたまま食い物にされる。脳の活性は完全に妨げられている。そして今日もおれは食い物にされ、明日も食い物にされる。

せめてもの救いは、エメラルドゴキブリバチがその名の通り、美しいエメラルド色であることだ。美しいもののたに死ぬ。悪くはない。おれの身体は動かない。おれは内蔵を食われている。それでも、生きている。