それは少し風の強い日だった。
時計の針が示す時刻に違和感があった。太陽の位置だけがただ正しかった。
ダ・エノシマ。
名のしれた観光地であったわりには、ずっと商売っ気がないと思って過ごしていた。おれの地元ではなくなって20年、商売っ気が出てきて、すこしつまらなく思うおれもいる。
日本の有料の乗り物の中でも特異な地位を占めるエスカー。だれかが歌ったようにエスカーは揺れない。エスカーに乗るわれわれの心が揺れるのだ。
アイ・ワナ・ノウ。
ここらへんでオリンピックをやるらしい。児玉源太郎も神社で驚く。
いま、再びのエスカー。
いったい、この劇場なき芝居はいつ終わるのか。あるいは芝居なき劇場は。
私はいつ家に帰れるのだろうか。どこに、どうやって、いつ。―アルヴァロ・デ・カンポス
屋根の下で語り合おう、人類の悲惨について。
アオノリュウゼツランのそそり立つ花茎、そして江ノ島の……塔。愛称なんて覚えてない。テキーラが飲みたい。メキシコにはアガヴェ泥棒がいるらしい。
強風にさらされて屋外には出られない(でも、入場料は一緒)。
手前から寂光山龍口寺、左側にその裏山の仏舎利塔、その向こうに見えるのは西鎌倉の給水タンク、右奥にうっすらとランドマークタワー。新田義貞もこれらを目印に鎌倉幕府に攻め入った。
鎌倉幕府が今も続いていたら、おれの人生もまた違ったものになっていただろうに。
夢でも、消えないで。
おまえも2020年まで生きろよ、マシーン。
おまえも2020年まで生きろよ、キャット。
2020年にこの世が滅ぶような予感がしている。それまであなたに何度会えるだろうか。
おれが寂光という言葉を好むのは、べつに龍口寺の山号とは関係ない(なにせ今しがた知ったのだから)。
宇宙のように 複数であれ
山越しの阿弥陀。あれは山ではない。かといって雲ではないと誰が言えるのか。
待て、誰か笑ってるやつがいる。
おれは黄金世界に生きたい。寂光の中に消えたい。
冷たい色の花が咲き、花が終わり、それは少し暑く、でも、暑すぎもしない日のこと。