広島県坂町の82歳の男性は「フリーエージェントで阪神に行った時は『くそったれ』と思いましたが、帰ってきて、チームのために尽くして、先輩として若手を育ててくれました。広島にはなくてはならない人です。今後もチームの発展のために尽くしてほしいです」と話していました。
新井貴浩、引退。
意外だった。その数字とは裏腹に、まだまだガツンと打てる肉体を維持していると思っていた。代打で出てきたときのファンの声援がそう思わせてくれていたし、おれも「もっと先発で使ったら数字を残せるのではないか」などと思っていた。
新井さん、この打率ではな。しかし、下に落としてベンチのムードが、という現場の空気もあるだろう。ただ、今の場合は代打の順番ミスかなー。 #carp
— 黄金頭 (@goldhead) August 24, 2018
そして、数字以外のなにか。ベンチのムードを作るなにか。それにおいて、今のカープに新井以上の存在はいないと思っていた。
新井貴浩。新井。新井さん。おれ個人としては「新井」がしっくりくる。とはいえ、「新井さん」として愛されるキャラを否定するものではない。まったく否定しない。「新井さん」のネタを心から愛するといってもいい。でも、おれにとって新井は「新井」なのだ。
思えば、おれが入団から引退まで見届けてきた野球選手の中で、最高の成績を残したのは新井ではないか。妙な気がするが、おそらくはそうであろう。東出よりも新井なのだ。そうに違いない。
そんなおれは新井をどう見ていたのか。
……順番はむちゃくちゃだが、こんなところだ。ともかく、新井がカープを去って阪神に行ったときは心底冷たい気持ちになったものだった。カープに復帰したときも、素直に歓迎できなかった。
が、新井はそれをひっくり返した。広島を燃やしたし、広島から遠く離れたカープファンであるおれをも燃やした。まだまだ、「ここで一発、打ってくれるんじゃないのか」という気にさせてくれた。
しかし、引退という。「そういうときなのかもしれない」という一方で「まだ早いのではないか」という思いもある。五分五分である。鈴木誠也にチームリーダーの貫禄があるとはいえまだ若い、タナ・キク・マルとて中堅の年齢だろう。精神的支柱、というものがスポーツにおいてどれだけの存在か、体育会系未経験のおれにはわからない。わからないが、新井がいるといないでは大違いなのではないか……。
とはいえ、本人が決めたこと、球団の慰留をはねのけて決めたこと、だ。「やっぱり現役を続けたいです!」といってくれてもぜんぜん構わないのだけれど、本人が決めたこと、だ。
とはいえ、まだ新井の大冒険は終わったわけじゃない。なんとかプロ野球に滑り込み、下の下から叩き上げてきた新井の冒険、一度チームを捨て、そして戻ってきたプロディガルサンの冒険、まだ、終わったわけじゃない。リーグ三連覇は問題ないだろう。問題はその先だ。クライマックスシリーズ、そして日本シリーズ。そこまで、新井はプレイしなくてはならない。結果が、だれもが涙する大アーチであろうが、様式美とさえ言われる6-4-3のゲッツーであろうが、おれは、声援をおくるだけだ。そういうことなのだ。