タクシーからギューンとウィングが出てきて、時速300km/hオーバーでパリを疾走する……映画ではない。なにかレトロで可愛らしいオンボロタクシーの話である。オンボロタクシーは、男やもめで娘一人のタクシー運転手に操られ、ひょんなことから外国人ジャーナリストを乗せて光州事件の現場を目指すのである。
おれはあまり光州事件のことを知らない。名前くらいは知っている。そんな程度だ。そして、タクシー運転手も、情報が統制されてるなかとはいえ、そんな程度だ。学生のデモを、商売あがったりだと反感を抱いたりしている。が、それが光州の現場に立ち入り、官憲軍隊の横暴を見て……だ。
だが、そこまで説教臭くないのがいい。急に正義の心に目覚めた、という感じではない。タクシー軍団の頑張りなどもあるが、どこか生活の根っこ、人生の根っこを残しているところがいい。そうでなくては、理念先行のプロパガンダ映画になってしまうことだろう(そういう映画が面白くないに違いない、というわけでもないのだが)。
おれは、韓国映画といえば、「骨で撲殺」みたいなラーメンが獣臭い、ハードボイルド、ノワールを好むが、そういう路線でないこの映画も好もしく思った。なにか、邦画にもこのくらいの時代の、こういうテイストの作品があればな、などと思った。まあ、べつに洋画も邦画も韓国映画も、どれでもいいのだけれど。そんなところで、ちょっとおすすめです。以上。
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あの槍槓さえなければ……『哀しき獣』を観る - 関内関外日記
韓国映画=ミョン社長というおれの認識もいい加減更新されるべきだが。