この映画の面白さは、以下の記事を読めばいいと思う。
ともかく、設定だけで最高じゃないか。安企部のスパイが北に食い込む。金正日に会うまで食い込んだところで、なんと安企部の不倶戴天の敵である金大中が大統領選で有利になっている。そこで安企部は自らの組織存続のために、北の脅威を国民に見せて、保守がいいよな、という世論を喚起させなければいけない……。
そこまで言っちゃっていいんですか、いいんですか。いいんですよ。その面白い設定、さらには実話ベースなんだから、存分に葛藤と緊張感を味わえばいいのですよ。
で、主人公がファン・ジョンミン。なんというか、ナイツの土屋伸之と松重豊を足して二で割ったようなおっさんなんだけど、それがいいんだよなあ。あ、上の記事でも松重豊っていうちょる。
(町山智浩)黒人の美女かなんかだと思うじゃないですか。ブラック・ヴィーナスって聞くと。このおじさんはどう見ても松重豊さんにそっくりな渋めのおじさんですよ。
で、おれは人の顔を覚えるのを非常に苦手にしているのだが、この顔には見覚えがある。なんだろう。Wikipediaをたぐる。出てきた、これだ。この映画だ。
ノワールでラーメンが獣臭い韓国映画です。大好物なのであります。して、この映画に関しては、主人公もかっこいいのでありますが、松重豊と谷垣禎一を足して、さらに悪さをふりかけたみたいな悪徳市長役がすごいのであります。おれはあまり外国映画の役者さんに興味がないので「あの映画のあの役の人」とか言えないのですが、この映画については、この市長がすごい。この市長がすごい2018なのであります。いや、映画は2018じゃあないですけれども。
やっぱり松重豊言うてる。しかし、足しているのは谷垣禎一ときたもんだ。でも、だいたいなんか想像つくでしょ。そうだ、あの市長や。今回の泥臭くもあるスパイ役もよかったが、そうか、ファン・ジョンミン。おれは人の名前を覚えるのが大の苦手だけれど、覚えるかもしれん。『孤独のグルメ』の韓国版が作られるとしたら、ぜひファン・ジョンミンで。
というわけで、ノワールでラーメンが獣臭い韓国映画ではなく、朝鮮半島史の暗部を描いてみせた政治映画、スパイ映画の本作、おすすめです。以上。