おれは先月の誕生日、シャンパンを買おうと思った。シャンパンというと正確ではない。スパークリングワイン、か。どこで買う? コンビニでだ。セブン-イレブンで買おうとした。冷蔵棚を見た。1,000円くらいのがあったので、それにした。
が、そのとき本当に気になったのは498円の、だった。
おれはその後、2回にわたってそのスパークリングワインを買った。750ml、度数11%、原産国スペイン。
……原産国、スペイン。スペインは、日本から遠いと思う。どのくらい遠いかといえば、日本からスペインくらい遠いのだ。そんな遠くからはるばるやってきて、498円(税抜き)で売られる、というのが、よくわからない。
寿町で造られた密造酒をリヤカーでおっさんが持ってきた、というのならわかる。だが、スペインだ。スペインから持ってきて、498円(税抜き)で売っている。だって、あの、スパークリングワインて、こんなんじゃないですか?
なんか、この部分だけで200円くらいかかってそうな気がする。スペイン人が、この針金をねじっているのだろうか。それとも、EUの中で人件費の安い国の人がねじっているのか、それともアフリカから来た人がねじっているのか。……それとも、機械? まるでわからない。
それにしても、スペイン。韓国、中国、台湾、ちょっと離れてオーストラリア、というのならまだわかる(いや、わからん)。だが、スペインから持ってきて498円(税抜き)というのが、想像がつかない。
いったい、どのくらいの量を運んできて、全国津々浦々のセブン-イレブンに運んで、それで、いったいセブン-イレブンの取り分はいくらで、輸入者である南アルプスワインアンドビバレッジ株式会社の儲けはいくらなのか。
ちょっと、想像できない。いや、まるで、想像がつかない。だいたいにして、あまりセブン-イレブンでスパークリングワインを買っている人間を見かけない。それでも、なんだろうか、全国津々浦々の、ほとんどが24時間営業をしているセブン-イレブンの冷蔵棚に並べておけば、それなりに売れるのだろうか。それでも、あんた、それが売れたときのセブン-イレブンの取り分(粗利?)はいくらなんだろうか。一体全体、元は取れているのだろうか?
取れているに決まっている。そうでなければ、この「パラシオ デ クリスタル ブリュット」をおれは買って帰ることはできなかった。資本主義というか、自由経済というか、そういうなかにあって、それで儲けが出る、ということだ。……そこが想像つかない。
どんな規模で、どんな原価で(もちろんスパークリングワインの本体はスパークリングワインであって、針金の部分や瓶ではない)製造され、どのくらいの本数がはるばるスペインからやってきて、全国のセブン-イレブンに配られ(……と、今思ったが、全国のセブン-イレブンで仕入れているわけでもないか。少なくともセブンのPBのスパークリングワインではないのだ)……。いったい、一本ごとにどれだけの金が動くのか、日本国ではどのていどの金が動くのか、まるでわからん。
まるでわからんといえば、蒲焼さん太郎とか、あれはなんなんだ。いったい、あれを一枚売ったところで、コンビニにいくら入るのか? どれだけの日本人が蒲焼さん太郎を食えば、どの程度の頻度で買えば、蒲焼さん太郎に利益があるのか。そのあたりが、まったく想像つかない。だがしかし、それを売ることによってコンビニにメリットがあるのだから売られているのだし、それで儲けているのだから蒲焼さん太郎は製造され、出荷されているのだ。
……まるで想像がつかない。おれが海山商事のような会社に勤務していたらわかったのだろうか。まあ、蒲焼さん太郎作ってる会社でもいいか。というか、世の中で売られているもののほとんどについて、どんぐらいの数が売れて、どんくらいの儲けが出ているのか、おれは知らないで生きているのだな、とあらためて思ったわけである。たとえば牛丼チェーンはどうだ? ……とか、そのあたりは上場企業だったりするので、公開された数字を見る人が見ればわかるだろうし、ネットで探せば簡単に手に入るかもしれないが。
まあ、そんなことを、酔った頭で考えた。考えたというほど考えていないので、思うた、というくらいのことだが。