将棋特集で買った「Number」。今度は競馬特集で買った。おれは「競馬の天才」というもっとどろどろした競馬雑誌を毎月買っているので、「Number」を買うこともないのだが、次の記事が気になった。
名人位に就いた渡辺明と、ダービー2勝ジョッキーになった。福永祐一の対談である。言われてみれば名人とダービージョッキーというものは似ている。ともに最高賞金額のタイトルではない。しかし、ともに「それになるとならないでは大違い」なところがある。そのあたりで、できるかどうかと言われ、できてしまった二人の対談なのである。
福永 別にダービーを勝てなかったとしても、いい騎手人生じゃないか、ってそれまでは思っていた。世界ナンバーワンのレーティングの馬(ジャスタウェイ)にも乗ってたし、アメリカで勝って、香港で勝って、ドバイでも勝った。なかなか経験できることじゃないよな、とまとめてたけど、ダービーを勝ってみてはじめて、自分にとって必要な、大きなタイトルだったんだ、と気づきました。
福永祐一の最初のダービー勝利はワグネリアンであった。皐月賞は楽勝だと思っていたらそうではなかった。ダービーは大外枠(17番)。それでも先行させて勝った。会心のレースという。
渡辺はこう言う。
渡辺 実は、僕は一昨年、33歳でA級から陥落したときに名人を諦めたんです。実際、そういうコメントをして、記事にもなりました。A級からB級1組に落ちると、どんなに頑張っても名人戦には出られません。
そこからノープレッシャーでB1を全勝してA級復帰、さらにA級の最下位からの名人挑戦。藤井聡太二冠がまだB級2組のこのとき、「今年しかない」と思い、名人を獲ったという。
いろいろと興味深い話よな。そして、ダービージョッキーと名人というもの。競馬人、そしてジョッキーにとって日本ダービーは特別なものだ。いや、ダービーと名のつくものは特別なものだ。この「特別」というもの、ファン以外にはわかりにくいかもしれない。とはいえ、おれは毎年ダービーになると「ダービージョッキーにふさわしいジョッキーは誰だろうか」と考えて馬券を買う。無論、すでにダービージョッキーになっている騎手は条件にかなっている。そのようなものだ。
おれのidはgoldheadだが、馬のゴールドヘッドは大井の東京ダービーで2着だった。鞍上は的場文男。公営大井で偉大なる実績を持つ的場は、まだ東京ダービーを勝っていない。東京ダービー2着10回。「大井の七不思議」の一つと言われるが、他の六つは不明だ。それほどのことだ。的場文男は東京ダービーを勝っていない。だからこそ、的場文男はいまだに乗り続ける。大井競馬のリーディングを21回獲り、64歳になった今でも乗り続けるのだと思う。
福永祐一も渡辺明も、わりと諦めた境地から、ダービージョッキーに、名人位に就いた。そこには柴田政人のような執念は感じられない。だからこそ、逆に就けたというとろもあるようだ。そのように感じる。
騎手にしろ、棋士にしろ、ある種の脱力から最高位に登りつめるというところがある。とてもおもしろい話だ。
ちなみに、福永祐一はコントレイルについて、3000mは「ベストパフォーマンスを発揮できる距離ではない」と言い切っている。今日はライバルのサリオスが1800mの毎日王冠を楽勝した。さて、ベストでないコントレイルを負かす生粋のステイヤーが菊花賞に出てくるだろうかどうか、その日まで楽しみにしようじゃないか。
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この『Number』で佐藤天彦だったか、「藤井聡太くらいの棋士が出て、将棋界が注目されなかったら、自分たちは何をやっているのかということになる」というようなことを語っていたが、無敗の二冠馬コントレイルの世間への知名度はどのていどのものだろうか?