一日、二日、そろそろ届いてもいいだろうと思った。
念のためAmazonの注文履歴から確認してみたら、「ご注文商品を玄関にお届けしました」になっていた。
え、届いてない。
おれの頭の中では、ミハイ・チクセントミハイという言葉がこだました。
そして、平沢進の「白虎野の娘」のメロディが流れた。
おれはこの冒頭が「ヨーヤーナムゼーイムゲホミィーハァーイ」と聞こえるのだ。ミハーイ。面倒なことになった。
玄関、といっても、おれはいつもAmazonの商品を職場で受け取っている。酒もだ。今まで自動的に置き配になっていても、だいたい中に持ってきてくれていた。
で、配達されたという時間が真っ昼間だった。少人数とはいえ、その時間は真っ昼間の真ん中なので、社員がコンビニに出たりする時刻だ。おれも外に出る時刻だ。もしも玄関、職場のドアの外に置かれていたら、気づかないはずがない。
盗っ人がいないとはいえない街だ。新聞が盗まれていたこともある。ビルの管理人に防犯カメラを設置してもらって、郵便受けに「防犯カメラ設置済み」の貼り紙をして収まったが(おれは最初「防犯カメラ設置中。新聞泥棒は見つけたら殺す」というシールを作ったが、却下された)。とはいえ、外から見えない位置にあるし、盗っ人がずかずか入ってくる時刻でもない。
まあ、誤配か窃盗かわからない。そういうことだ。配達されたという時刻から一日とちょっと経っていた。どうしたものか。
おれはわりとインターネット古参、老人であり、表も裏もちょっとわかっているつもりだった。が、Amazonの置き配が未配で、未配がおれで、という事態に、どこにアクセスすればいいのかわからなかった。
わからなかったので検索した。検索してわかった。
トップページいちばん右下のヘルプ→左下の「トピックから探す」→「問題が解決しない場合は」→「カスタマーサービスに連絡」→「今すぐチャットをはじめる」。
これで、とりあえずAIがチャットの対応をしてくれる。AIに「この注文に問題があった」むねを伝えると、今度は人間であろう唐(とう)さんが出てきてくれた。再度、配達済みになっているが、商品が届いていないことを伝えた。
すると、すぐに「では、すぐに再配達します」ということになった。おれとしては、配達先が職場であること、ちょうど人の出入りのある時間帯であったことなどを伝えなければいけないと思っていたので面食らった。
が、ちょっとして、「すみません」と出てきた。何だ? 「欠品ですので返金します」という。まあ、それでもいい。というか、それでいいのか。「では、それでお願いします」。
これで、やり取りは終わりで……いいのか? と、ちょっと待っていると、注文時に置き配を指定しないやり方を教えてくれた。おれは「ありがとうございます。では、このチャットを終了していいのですか?」と打った。よいとのことだった。おれはチャットの画面を閉じた。その日の晩には返金したというメールが届いていた。
おれが今までAmazonを利用してきてトラブルがなかったこと、すなわちAmazonに徳を積んできたことによる判断か、そもそも二千円ちょっとの商品くらい、とっとと再配達あるいは返金してしまうのが早いという判断かわからない。いずれにせよ、あっという間に返金が決まり、おれは「これでいいのか」と思った。思いつつ、Amazonで欠品ならしょうがない。ヨドバシにあるかな? と思って検索したらあった。あったので注文した。今度はちゃんと届いた。
おれが注文した焼酎はこれである。
だいやめ。なにせ、ライチのような香りという。芋焼酎でライチ? どんなんだそれは。
で、ヨドバシから届いただいやめ1,800ml、これをぐい呑に注ぐ。すると、たしかにライチの香りがする。これには驚いた。あらためて原材料を見たが、べつに「香料」なんか混ざっていない。さつま芋と米麹だけだ。フハッ、こんなんできるんか、不思議だ!
とはいえ、香りはライチ、味は焼酎。甘ったるさはない。おれは焼酎については甘ったるくてもいい派だけれども、これはこれでいいだろう。いや、それにしてもライチのような香りがしたな。不思議だ。初めて「茜霧島」を飲んだときも、「この味がさつま芋だけでできるのかよ」と原材料を見たことを思い出す。不思議なもんです、焼酎。まあ、興味を持ったら飲んでみてください。あと、Amazonで配達されてないのに配達済みになっていても、連絡とったらどうにかなるかもしれんので、問い合わせてみてください。以上。