で、「プリヴィズ」ってどうなの? 『プロフェッショナル仕事の流儀 庵野秀明スペシャル』を見た

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「プロフェッショナル 庵野秀明スペシャル」NHKが取材を後悔した庵野監督の生態 - Togetter

 

庵野秀明のドキュメンタリーである。初の長期密着取材だという。おれは庵野秀明という人のことをよく知らない。よく知らないというのは、たとえばエヴァより前の作品、すなわちアマチュア時代の作品や『ふしぎの海のナディア』を知らないということだ。『ナウシカ』で巨神兵のシーンを手掛けたことくらいは知っている。そして、リアルタイムからちょっと遅れでテレビ版のエヴァを知り……『シン・ゴジラ』も劇場でみたし、特撮にとくに興味ないのに特撮博物館にでかけたりもした。ただ、宇部市の出身だということは今回はじめて知った、そのくらいのものである。

 

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まあともかく『プロフェッショナル』である。これがかなり面白いものだった。予定より延びたであろう長期密着。被取材者からのドキュメンタリーへの監督行為。おそらく見る人がみたらヒエーとなるであろう名だたる制作陣の姿。いやはや、飽きることがない。

しかしまあ、あのお茶の間のシーンまでモーションキャプチャー使って作ってたとは思いもしなかったな。「プリヴィズ」という技術は、てっきりエヴァのアクションシーンに使われていたものとばかり思っていた。それがもう、圧倒的日常シーンで使われていた。田植えのシーンがロトスコープ的だとはパンフレットの鶴巻監督の発言にあったのだが、いやはや。

で、それが成功したのかどうかおれにはちょっとわからない。そのパンフレット冒頭の庵野秀明自身の言葉を引用する。

 

加えて、ヱヴァ:破の頃から試みていた特撮映像の手法と感覚を取り入れたアニメ映像の面白さ。
ヱヴァ:破の頃から願っていた実写映像の方法論と技術論を取り入れたアニメ映像の面白さ。

絵コンテを切らず(実際には切っているパートもあったようだが)、「プリヴィズ」でというところを指している……のか? おれは正直アニメ制作に詳しくないのでよくわからない。よくわからないのであてずっぽうな推測とかになってしまうが、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の感想において、「アニメーションがいまいち」、「戦闘シーンがよくない」といった声がいくつか見られたのは、それが原因なのかなーと。

いや、ほんまわからんです。わからんけど、まだその方法と技術が熟しきっていないところに、いろいろな事情と最後のタイトなスケジュールが重なって、やや今までの「エヴァ」のクオリティに届かないところがあったのかな、などと。いや、おれ自身も、ちょっと印象的な戦闘シーンがなかったかなというところもあって、否定的な意見に「そういうところあったかな」と思ってしまったので。だれか「プリヴィズ」導入の功罪について解説してくれないものだろうか。

でも、一方で、「よくぞ終わらせてくれた」という声も多かった。そんな細かいところはいいんだ、庵野は、エヴァは、落とし前をつけた。終わってくれた。そこに尽きるという思い。それもある。

そして、今回の『プロフェッショナル』を見て、やはり魂を削って、酒を飲んで、お菓子を食べて、血を流して映画を作っている庵野監督をみて、よくぞやってくださったという思いは否めない。

なるほど、番組の最後に番組のタイトルを否定してみせたが、『プロフェッショナル』というにはなにか似合わないし、「仕事の流儀」というのもちょっと違う。職人芸的な技、技術というものはもちろん宮崎御大らが認めるものがあるのだろうが、やはり異星人? テロリスト? なのだろう。

今後、庵野秀明がどんな作品を手掛けるのかはわからない(いや、さしあたって『シン・ウルトラマン』に携わるのだが)。おれとしては、「実写映像の方法論と技術論を取り入れたアニメ映像の面白さ」の極みを見てみたいと思う。新しい、庵野アニメが見たいのだ。

もちろん、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』はもう一度みにいくが。

 

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