目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき
それはまみ初めてみるものだったけどわかったの、そう、エスカルゴ掴み
『ウは宇宙船のウ』から静かに顔あげて、まみ、はらぺこあおむしよ
まみの髪、金髪なのは、みとめます。ウサギ抱いているのは、みとめます。
ライヴっていうのは「ゆめじゃないよ」ってゆう夢をみる場所なんですね
これ以上何かになること禁じられてる、縫いぐるみショーとは違う
手紙かいてすごくよかったね。ほむがいない世界でなくて。まみよかったですね。
免許証みせて あなたが乗りこなす動物たちの名前をみせて
まみの生理を食べている怪物が宇宙のどこかに潜んでいるわ
赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、きらきらとラインマーカーまみれの聖書
……穂村弘による短歌集である。正直、どう感想を書いていいかわからない。そもそも短歌がわかっていない。ひとつひとつの気になった歌に感想を書くべきか、それとも、ということで、なんとなく「こんな感じですよ」という感じで並べてみた。どういう感じですか? これに、タカノ綾さんのキュートでエロい絵がついてくる。どうですかお客さん、一冊どうですか?
文庫版あとがきにこうあった。
先日、或る方と対談をした。
そのとき、「ほむらさんの本は昔から好きだけど、正直、あれには引きました」と云われた。
「あれ」とは『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』のことだ。
その一方で、「作者の本で、これだけが好き」という言葉をインターネット上で何度も見かけた。
どちらの感想も、わかる気がした。
自分で読み返してもくらくらする。
二度と書けない。
今となっては、もうこの世界に近づくことも難しい。
そんな本です。
べつの本で、穂村弘は、青春や恋愛などの「非常事態」から歌が生まれることがあるようなことを書いていたが、はたしてこの本はどのような非常事態に作者はあったのだろうか。おれにはちょっと想像がつかない。
また、詩作について石川啄木がこんなことを書いていたが。
「即ち真の詩人とは、自己を改善し、自己の哲学を実行せんとするに政治家の如き勇気を有し、自己の生活を統一するに実業家の如き熱心を有し、そうして常に科学者の如き明敏なる判断と野蛮人の如き率直なる態度を以て、……
— 黄金頭 (@goldhead) 2021年6月23日
自己の心に起り来る刻々の変化を、飾らず偽らず、極めて平気に正直に記載し報告するところの人でならねばならぬ。」石川啄木
— 黄金頭 (@goldhead) 2021年6月23日
短歌とてそういう、なんというか一人称のものだろう、たぶん。基本的に。それが、これはほむほむがまみであって、まみのなかにほむほむが出てくる。そういう構造の短歌というのは珍しいのかもしれない。
「まみ」にモデルがいるらしいが、やはりこれはほむほむの中から湧き出たなにかのような気がする。くらくらするくらいのなにかだ。「世界音痴」のほむほむから、なんか出た。ちょっと、くらくらしてくれ。
なにせこう、タイトルの「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」からしてもう、完全にいっちまってるって感じがする。少女というには大人びて、大人というには少女の世界。一冊の少女漫画を読んだような気にもなるし、やはりうまく説明できねえよ、なっ。
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