穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』を読む

 

目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき

 

それはまみ初めてみるものだったけどわかったの、そう、エスカルゴ掴み

 

『ウは宇宙船のウ』から静かに顔あげて、まみ、はらぺこあおむし

 

まみの髪、金髪なのは、みとめます。ウサギ抱いているのは、みとめます。

 

ライヴっていうのは「ゆめじゃないよ」ってゆう夢をみる場所なんですね

 

これ以上何かになること禁じられてる、縫いぐるみショーとは違う

 

手紙かいてすごくよかったね。ほむがいない世界でなくて。まみよかったですね。

 

免許証みせて あなたが乗りこなす動物たちの名前をみせて

 

まみの生理を食べている怪物が宇宙のどこかに潜んでいるわ

 

赤、橙、黄、緑、青、藍、紫、きらきらとラインマーカーまみれの聖書

 

……穂村弘による短歌集である。正直、どう感想を書いていいかわからない。そもそも短歌がわかっていない。ひとつひとつの気になった歌に感想を書くべきか、それとも、ということで、なんとなく「こんな感じですよ」という感じで並べてみた。どういう感じですか? これに、タカノ綾さんのキュートでエロい絵がついてくる。どうですかお客さん、一冊どうですか?

文庫版あとがきにこうあった。

 先日、或る方と対談をした。

 そのとき、「ほむらさんの本は昔から好きだけど、正直、あれには引きました」と云われた。

 「あれ」とは『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』のことだ。

 その一方で、「作者の本で、これだけが好き」という言葉をインターネット上で何度も見かけた。

 どちらの感想も、わかる気がした。

 

 自分で読み返してもくらくらする。
 二度と書けない。
 今となっては、もうこの世界に近づくことも難しい。
 そんな本です。

べつの本で、穂村弘は、青春や恋愛などの「非常事態」から歌が生まれることがあるようなことを書いていたが、はたしてこの本はどのような非常事態に作者はあったのだろうか。おれにはちょっと想像がつかない。

また、詩作について石川啄木がこんなことを書いていたが。

短歌とてそういう、なんというか一人称のものだろう、たぶん。基本的に。それが、これはほむほむがまみであって、まみのなかにほむほむが出てくる。そういう構造の短歌というのは珍しいのかもしれない。

「まみ」にモデルがいるらしいが、やはりこれはほむほむの中から湧き出たなにかのような気がする。くらくらするくらいのなにかだ。「世界音痴」のほむほむから、なんか出た。ちょっと、くらくらしてくれ。

なにせこう、タイトルの「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」からしてもう、完全にいっちまってるって感じがする。少女というには大人びて、大人というには少女の世界。一冊の少女漫画を読んだような気にもなるし、やはりうまく説明できねえよ、なっ。

 

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……おれが穂村弘に興味をもったのは「武蔵丸」の夢なのだから、ずいぶん遠い話のようにも思える。