坂本慎太郎の声はずっと聞いてたいな アニメ映画『音楽』を見る

 

ほぼ監督一人の手によって作り上げられたインディーズ・アニメ映画である。7年で4万枚描いたという。

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これ、珍作とか、希少性とか、ヘタウマとか、そういう先入観抜きに見てほしい。なんかそんなふうに思った。ああ、こういうアニメーション表現あるんだな、という思いがある。とはいえ、だいたいなんか笑ってしまうのだけれど。

そして、このアニメには「間」があった。言われてみれば、アニメには「間」がないような気がする。実写映画にはあるのかというと、あるのかもしれないな、ていどの話だが。

“間”を活かした演出を、多くの方が作品の魅力としてすんなりと受け取ってくれたのは、意外でもあり、嬉しくもありました。アニメーションって、動かすことが基本なので、“間”というものはまず存在しないんです。でも、「音楽」ではそれをあえて大胆に用いることで、物語的にもメリハリが出せるんじゃないかって考えたんです。セオリーからは外れるけれど、作品としてはプラスになるはずだと。今回は「アニメーションだったらこう」という枠を外して、あくまで「映画」としての演出をやろうとしたんですが、それが受け入れられた手ごたえがありました。

ちょっと「間」を取りすぎ、と感じなくもないが、やはりこの点はうまくいっていると思う。悪くない。これはアニメファン、そうでない人、ちょっと見てほしい。

そして、主役の声が坂本慎太郎なのである。おれはゆらゆら帝国の最初からの熱心なファンというわけではない。しかし、「ミーのカー」を聴いて衝撃を受けた人間ではある。「ズックにロック」、「太陽の白い粉」、「待ち人」、最高じゃないか(いまはサブスクとかで聴けるのだろうから、ゆらゆら帝国を知らない人は聴いてみてほしい)。もっとも、その後のゆらゆら帝国の展開、解散後の坂本慎太郎の方向性については、あまりついていけなかったのはたしかなのだけれど。

なのだけれど、映画『音楽』での声優としての坂本慎太郎はよかった。なんともいえない魅力がある。セリフは少ないし、それもよいのだけれど、もっと聞いていたいというなにかもあった。すごい配役だ。

『音楽』の映画なので「音楽」も重要だけれど、その点もよかった。「バンド」が最初に音を出したシーンとか「いいなぁ」と思うのである。そういう「いいなぁ」というシーンが多く描かれていて、魅力的な作品となっている。

今どき、サブスクとかで見られるんだから、アニメ映画『音楽』(岩井澤健治監督)……とか書かないとググラビリティ(死語かな?)の低い作品だが、まあともかくちょっと見て、聴いてくださいよ、と言いたい。ほんとうに悪くない作品なのだから。