おれという不審者と、社会

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寄稿いたしました。だいたいタイトルの通りのことを書いております。おれがそちらの本文中に書いた不安心というものは、脚色なしの本当のことであります。ぜひとも一読お願いしたく……。

読んだ?

読んだかなあ?

読んだよなあ?

 

……と、不審者丸出しで書いてみたところで、やっぱり思うんだが、不審者として生きるのはなかなかに面倒くさいことだ。つらい、とまではいかないまでも、面倒くせえ。いちいちおれのおれがまっとうな人間である証を立てながら生活しなきゃいけねえ。そして、強迫性障害的な要素のあるおれにとっては、その「いちいち」が、本当に「いちいち」意識することなんだ。

たとえば今夜よぉ、今夜のことだけどよ、会社からの帰り道、ちょっと体調が悪くて、若干のろのろ自転車漕いでたんだ。電動アシスト付き、子ども乗せのママチャリにびゅんびゅん抜かされるくらいはさあ。そんで、おれがなにを考えていたかというと、「朝から閃輝暗点が出て、頭痛がありました。このことは会社の人も証言してくれます。昨日も同じように調子が悪かったことは、Twitterにも昨日付で書き込んであります。確認してください。怪しい目的のためにのろのろと自転車を漕いでいたわけではありません」といういいわけだ。

なにをして、なにに対するいいわけというわけでもない。ともかく、おれの頭の中で繰り広げられるいいわけだ。この「いいわけ」は、もっとシンプルなことにも適用される。「会社を出た時間はタイムカードに記録されています」、「スーパーで買物をした時間はレシートに記録されています」、「コンビニで買物をした時間はレシートにも、楽天ペイの使用時間にも、監視カメラにも記録されているはずです」……。

嘘のように思われるだろうが、おれの日常の頭の中というのは、けっこうな割合でこういった「いいわけ」に占められている。「図書館に行くために外に出たのです」、「公園で花の写真を撮るのが趣味の一つです。その証拠に、過去の自分のブログに同じような花の写真があります。これはログインして見ているので、自分のアカウントです……」。

なにもかも、おれが独身で単独行動している中年男性だということによる。それは社会のなかの、子供にとっての脅威であり悪であり、家族連れにとっての脅威であり悪であるからだ。いくらおれ「そうではないのです。単に歳をとってしまった無能なだけの中年です」と言っても仕方がない。いや、言う機会を与えられる前に断じられてしまう。そして、それは正当なものだ。いやはや。

だから、おれはたくさんの釈明を用意しておかなければならない。自らの正当性を証すための証拠を揃えなければならない。そうでなければ、通報され、逮捕され、懲役刑を食らうことがあるかもしれない。おれがなにをしていないとしても、その可能性はある。この日本社会において、単独の中年独身男性というものは、そういう存在なのだ。そして、この社会の幸福の総量のためには、それを甘んじて受け入れなければならない。おれがいくら人間嫌いであろうと、家庭を持てるだけの容姿や才能、収入がない無能であろうと、その事実は変わらない。免罪符は存在しない。

なんの罪もないはずなのに、なんらかの罰を受ける。それしかないのだ。これについて、同じような境遇の人(いるのかしらんが)にとって裏切りになるかもしれないが、「女」の人と一緒にいるときは、微塵も不安を感じない。二十年の付き合いになる、年上の「女」の人だ。二人連れのときは、まったく、なんの不安もない。金銭的、ドレスコード的な意味を除けば、どこへでも行ける鍵を持っているような気分だ。昔のドラゴンクエストとかで、新しい「鍵」を持っているような気分なのだ。男女二人連れであれば、公園で遊んでいる子供に、こちらから声をかけてもなんら心配はない。そんな気分。

ゆえに、おれがおれ一人のときの不安を強く感じる。コロナにあって、一人行動が多くなって、そんな気分を感じることも多くなった。そんなおれは、やはり「いいわけ」を用意しておかなければならない。今、ふらふらしているのは、双極性障害のうつ障害が出ているせいですよ。双極性障害というのは躁うつ病とも呼ばれるやつです。障害者手帳も持っています。お見せします。決して、泥酔しているわけでも、変な薬をやっているわけでも、あやしい行動をしているわけでもないのです……。

つかれる。非常につかれる。おれは独り身というものはこのうえなく気楽なものだと思ってもいるが、そうでもないところもある。それは認めなくてはならない。せめてもの救いは、おれの暮らしているゾーンに子供は少なく、おれのようなピアス三つつけた何をして生きているかわからない中年チンピラがめずらしくもないドヤ近くだということくらいだろうか。いや、おれが一般の住宅街などに住む自信はない。その機会もないだろうが。

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