でも、月世界の想像図は(それには別に色はついていなかったが)もっと私を驚嘆させた。もしもあの頃、『お前はどこへ行ってみたいか?』と尋ねる者があったとしたら、私の"Anywhere out of the world"は『月世界』であったはずだ。
お月見。 pic.twitter.com/Bt5LHl3Eko
— 黄金頭 (@goldhead) 2022年11月8日
皆既月食だという。おれは先日、新しいiPhone持って散歩してみて、「やっぱり写真機だな」と思ったところだったので、「ひさびさにカメラを使うか」と思った。職場に置いてある古いレンズ交換式カメラは……まだ動いた。もう何年も使っていない安くて暗い300mmは……カビ生えてなかった。ヨシ!
でもって、おれは過去に撮った皆既月食のことを思い出した。同じ機材で同じような場所で撮るのだ。どう撮ったのか参考になるはずだ。
あれ、ぜんぜん役に立たない。ゴミ記事だ。
そして、この記事もゴミ記事になる。というか、まず、ゴミ部屋を漁るところからはじまった。おれは早めに、というか、定時に退社した。部屋で、三脚とレリーズを探す必要があるからだ。たしか、三脚のバッグの中にレリーズも入っている。セットでしか使わないからだ。で、セットで使ったのは……上記記事の12年前? という話。
が、わりとあっさり見つかった。「このあたりか、あのあたりだ」と思っていた「あのあたり」の方にあった。が、バッグの外見が……。出してみると、レリーズのケーブルがひどいことに……。このあたりの詳細は書くまい。だが、洗ったり、拭いたりして、きれいになった。
が、レリーズ、使えるのか? 12年ぶりだぞ。カメラに差す、ボタンを押す。シャッター切れた。よかった。
……が、その前に、おれはカメラの使い方がまるでわからなかった。一応、「月の撮り方」とか検索してみたが、「バルブ撮影……ってどうやるんだっけ?」というレベル。iPhoneでソニーのサイトから取扱説明書のPDF(よく残っていたな)を読んだりして、なんとなく思い出す。
バルブ撮影。こういうものもあったのか。
……などとやっていると、もう月食が始まっていた。カメラを三脚に装着して、有線レリーズぶらさげて、そのままむき出して近所の公園へ。もう真っ暗な公園には、人っ子ひとり……いた。ベンチに座って携帯端末をいじっている男がひとり。たぶん、男。何歳くらいかもわからない。
おれは三脚の足を伸ばして、固定……。が、なんか変だ。もとから軽くてしょぼい安い三脚だが、なんかネジのところがバカになっている? カメラとレンズの重さに耐えられない?
ああ、もう、なんか始まってる。あ、写真は全部トリミングも加工もなしです。
うーん、設定がわからん。ピントも合わん。
まあ、どうでもいいか。月なんてのはな、誰が撮っても一緒なんだ。問題は、どれだけいいレンズを使っているかだ。
ぼ、暴言でした。というか、風吹くとぶれるぞ。
もう、しょうがないよな。
おれは、立つのが面倒くさくなったので、空いていたベンチに座った。座って、足組んで、たまにレリーズでシャッターを切る。iPhoneでLINEとか見ながら。態度が悪い。
隣のベンチからいつの間にか携帯端末の男がいなくなっていた。かわりに女の人たちがきた。はっきり言ってしまえばおばちゃんたちである。三人だろうか。そして、なぜかわからないが競馬の話をしはじめた。競馬狂いのわりに競馬場どころか場外にすら行かない自宅派なので、他人が競馬の話をしているのを聞くというのは新鮮ですらあった。
「エリザベス女王杯はマジカルラグーン買ってみたいですよね」とか話の輪に加わろうかと思うも、急に話が「パワー」とか「波動」の話になっていたのでやめる。
たまに小さな子を連れた母子などが公園に来るも、子供はべつに月に興味もなく、なんか真っ暗な中でブランコをしたりして、すぐに帰っていく。おれはだいたい寒くなってきて、黒マスクにヤンキー風黒ジャージでピアスぴかぴかで、なぜかレンズ交換式カメラで月撮ってる、キモくて金のないおっさん。
いろいろ設定をいじったりするも、まあなんかしょうもないよな、と思う。思ったところで完全に皆既月食の時刻になったので、撤収。おばちゃんたちはまだ話に花を咲かせている。「完全に真っ暗になるかと思っていたのよー」。うん、なんでならんのだろうね?
すっかり冷えたおれはアパートに戻るとすぐに焼酎のお湯割りを作った。そこに蜂蜜など流し込む不埒者。しかしまあ、カメラは腐っていなかったし、まだ動くようなので、また散歩行こうかな、とか思っている。お散歩用のレンズにカビが生えていなければだが。
以上。