「金沢に行こう」と言われて、金沢動物園か金沢文庫かと思ったら、21世紀美術館があるほうの金沢だった。石川県だ。ゴールデンウィーク一ヶ月前くらいのことだった。さっそく新幹線とホテルの予約を試みたが、復路の新幹線の座席が確保できなかった。それならばと予約キャンセルしたうえで、「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」という新幹線往復とホテルがワンセットになったやつを申し込んでみたら、こっちは確保できた。そういうものらしい。
以下、写真多い。あと、べつに旅慣れた者でも、食通の者でもないので、有益な情報はない。
寿司
さて、朝5時に起きて6時台の京浜東北線に乗って東京8時台の新幹線「かがやき」に乗って、11時ちょっと前に金沢に着く。そのまま一直線で向かうのは「金沢まいもん寿司」金沢駅店であった。
r.gnavi.co.jp金沢は回転寿司でもおいしいというが、どこにあるかはわからんし、混んでいるかもしれない。回っていなくてすごく高級なお寿司屋さんにも行けない。穴場も知らない。だったら、金沢駅にあるそこそこ評判のよさそうな寿司屋に行けばいい。開店ちょっと前の到着だし、ちょうどいいだろう、と思った。
そんで行ってみたら、いきなり行くエリアを間違って出遅れた。それで事前にシュミレートしていた店までの経路もわけがわからなくなり(朝からすごい人出だったのもあって)、少し出遅れた。開店前には並べたが、すでに行列は折り返し状態で、すぐ後ろで受付ストップの看板が立った。
みんな寿司ってどのくらいで食べるんだ。店の中を覗いたりする。あ、ビールいってる人いる。いいなあ。……などと待つこと五十分くらい。ようやく入れた。頼むはランチで一番高い百万石コース(だっけ?)。五千五百円かな。まあそんなもんと言われればそんなもんかもしれない。でも、おれは人が握る寿司なんていつ以来か。というか、寿司自体いつ以来か。
というわけで、いきなり出てきたのがアナゴサン。器も少し温められている。女の人はこれが一番美味しかったと言っていた。
そして、寿司。シャリは少し小さめ。あ、寿司の前にあれだ、お味噌汁が出てきて、これがたいへんおいしいのである。金沢はお味噌汁がおいしいなと思った。
で、寿司の方だが、おれの感想としては「大トロとウニがおいしかった」というところであって、寿司慣れしていない人間の言うことであって、「最後に手渡しされたのどぐろの巻物が美味で」などではなく、「ああ、ウニってこんな味だっけな」と思うばかりであった。おれがまともなウニを食べたのはいつ以来か、まったく思い出せない。ただ、食べたことはあると思うんだよな……。
というわけで、「金沢で寿司」はクリア。なんなら鮮魚もクリアといっていい。あと、寿司だけど、おれ、去年の九月に人が眼の前で握った寿司食ってたわ。桜木町に寿司とラーメンが楽しめる変な店があるんだ。
すごい煮干ラーメン 野毛 すし 釣りきん - 桜木町/ラーメン | 食べログ
まあ、どうでもいいか。でも釣りきんの寿司職人さんも外国人客へのおもてなしもしっかりするし、なによりちゃんと目の前で握ってくれるんだぜ。
もてなしドームと鼓門
はい、そんでもって金沢駅東口出ると、「もてなしドーム」と「鼓門」がどーんとある。
すげえでかい。
なんか金色っぽい流れるのもある(金沢は基本、金というか金箔でいこうというのは後で知る。というか寿司にも金箔ちょっとあったな)。
でも目立つのはこれよな。これ、なんだ。
はい、予習してきました。復習します。本の著者は金沢市役所の助役から市長になって二十年つとめた人。半ば自慢話本といってもいい。で、その本にこのへんについてこう語られている。
……巨大な屋根にした理由は、金沢が雨や雪の多い土地であるため、客人にそっと傘を差し出す「もてなしの心」をイメージしたものです。
いや、「そっと」というには巨大すぎるだろ。
しかし、できたばかりのころは、市民の間に「異様だ」、「目立ちすぎだ」という批判もありました。
やっぱり。でも、なんかアメリカの旅行雑誌に世界でもっとも美しい駅十四駅に選ばれたりして、だんだん評判もよくなっていったんだとか。
ここ、初日は通り過ぎただけだが、再訪することになる。
金沢の街を歩く
でもって、とりあえず歩いて金沢21世紀美術館へ向かう。バスでもいいが、予約していた時間に余裕があったし、とりあえず街を歩くかと。
でもって、第一印象は、なんかおしゃれな感じよな、というところ。いい具合だ。いい具合なおしゃれさと広さだ。なんかおしゃれなところの写真載せろよという話だが、まあいいだろう。
で、だいたい武蔵交差点を覚えておけばいい感じに街のだいたいを把握できるかもしれない。いや、今回の行動範囲においては。
近江町市場。「近江町市場で海鮮丼」とか思っていたが、今回は縁がなかった。
中央観光案内所は本当に街の中央にある感じなので。駅にもなんかあるのかもしれないが。
キンコーズは休み。
いあ、その向こうの尾山神社。神社には見えない。
兼六園菊桜の原木の挿し木だかなんだかがあった。やべえ、本物の兼六園菊桜だと思う。もうほとんど散っていたが、ちょっと残っていた。いや、本物の兼六園菊桜だよな。
あと、前田利家公の像とか。背負っているのは米俵ではありません。
そんでなんかしゃれたベンチがあるなと思ったら。
カエルだった。
うーんやっぱり兼六園菊桜。終わっているのが残念。本物(に限りなく近い)だけに。
神社近くから裏道みたいなところに入る。こういう町中華にふらりと入るのが通なのだろうが。
まあ、旅先で鍵・錠前に困ることはないか……。ないとも言い切れないが。
変なホテル。
兼六園方面に行くと、なんかでかい公園がある。でかい芝生広場。これに事欠かない。これは知らなかった。とにかくなんか芝生広場がでけえ。それが金沢。
神に栄光あるのも金沢。
市庁舎があるのも金沢。市庁舎があるのは当たり前だが、なんか音楽のイベントをやっていて、ジャズの生演奏など流れてきた。あなどれない。
金沢21世紀美術館(で、地震にあう)
はい、目的地。先の元市長の本によれば「伝統の街である金沢に現代美術は似つかわしくない」と最初は大半の人が批判的であったという現代美術館。でも、県立が伝統方面だったので、だったら同じものをやることはないという判断だったそう。
まあ、成功したのではないかその目論見。わざわざ神奈川県から来る人間もいることだし。
これも有名だろ。
《スイミング・プール》。ちなみに、プールの底に入るには事前予約が必要でそうとう難しそう。
で、今回の目的となった展覧会は、アレックス・ダ・コルテの「新鮮な地獄」展なんだな。偶然だが。
しかしさあ、おれ、何度か書いてきたと思うんだけど、現代アートの映像作品ってわからんのよ。正直言ってしまうと、眠くなる。TikToKとは言わないが、まだテレビの映像のほうが面白かったりするんじゃないか。この、現代アート展でよく遭遇する、変な音が出ている一角があって、部屋に入ってみると始まってから何分経ったかもわからない映像が流れていて、とくだん面白くもなく、切れ味もなく、なんだかわからん、というような。
というわけで、ほぼ映像作品のアレックス・ダ・コルテ展もそんな印象のものばかりであって、割った生卵の中味をコカインのように鼻から吸い込んで少しむせて鼻から白味を垂らすというのは少し面白かったが、それも芸術的なスローモーションであって、芸術的やなあと思ったりした。《ゴム製鉛筆の悪魔》という新しい作品はなにかしら目を引くところがあったが、前編2時間39分21秒の作品を四分割であって、さすがに飽きてくる。そして、目を引くわりに、そんなにおもしろくないんだ!
……とか、思って展示室を出たそのとき、べつのお客さんの携帯が変な音を出した。と、同行の女の人の携帯もなんか鳴った。と、思ったら、地震だ! 緊急地震速報みたいなやつだった!
旅先で地震にあう。 pic.twitter.com/xF8jmLbW7L
— 黄金頭 (@goldhead) May 5, 2023
美術館のお客さん全員出て廊下で座ることになった
— 黄金頭 (@goldhead) May 5, 2023
などということに。
職員の人が出てきて、「みなさん、展示室から出て……しゃがんでください!」という。そのくらいにはけっこうゆれた。でも、なんかガラス張りの廊下より、今回については倒れてくるようなものもない展示室内のほうが安全なんじゃないかとか思わないでもなく、でもそういうマニュアルがあるのかもしれず。なんとなくようわからんが、座って待つ。いつ解除されるのかわからない。みんな携帯端末で地震情報を見る。おれもTwitterなど見る。能登半島で震度6強。これは大きい。こちらはそこまで大きくなかったのだ。女の人は、職員の人と「地元ですか?」「いえ、横浜から来たんですよ」などと話している。
しかし、座っている人は有料展示会の中の人だけであって、無料ゾーンの人たちや、外人たちは普通に歩いている。ガラス張りだから見える。外の人たちから見たら、なにか参加型の現代アートをやっているのかと思われたかもしれない。
しばらくして「お戻りください」ということになった。立ったら少し立ちくらみした。
そのあとは、なんかべつのコレクション展など見た。松田将英の《ザ・ビッグ・フラット・ナウ》、これは映えそう。というか、そういうのを目的というか内包している作品である。おれは樫木知子という人の《タイルの部屋》という絵画が好みだった。あと、常設展示なのか《カプーアの部屋》。
まあ、美術館は、そんな感じで。
外も子供たちが遊んでいたりして。
よい空間だなとは思ったが、美術館としてどうなのかというと、これはちょっとわからない。かつて高嶺格が横浜美術館について「年代ごとに作品を展示するような展覧会には合っているが、現代美術の展示には合わない」とディスっていたが(そういう意見を受けてかどうか知らないが横浜美術館は数年がかりの大規模改装に。まだ新しい姿はわからない)、ここはどうなのか。円型だけあって、はっきり言うて自分がどこにいるのかようわからんし、展示の順番もわからんし、わからんところが現代的だといえばそうなのかもしらんが、単純に自分が見た展示室とまだ見ていない展示室の位置がわからんし、美術館としていいのかどうか、ちょっとはかりかねる。
でも、すごい人だった。あと、若い人がすごく多かった。今まで行ったことのある展覧会でこれだけ平均年齢というか、絶対的に若い人が多いのはありえないというレベルというぐらい。学生の、若いカップルだらけ。なんなら、子供連れの若いファミリーすら高齢よりで、おれみたいなおっさんなんかほとんど存在していないくらい。それには本当に驚いた。ひょっとして、若者の間でアレックス・ダ・コルテが大人気なのかもしれないが……。
まあ、若い人に人気があるのはいいことだ。美術館に人がいるのはいいことだ。いすぎても困るが、まあ。
というわけで、おれもフレッシュなヘルが必要だと思って、「新鮮な地獄」ワッペンを記念に買った。
……というわけで、今日はここまで。一日目・そのニへ続く