ラミレス

 

今朝は体調が悪かった。このところ仕事がやや暇なので「体調が悪い」といって午前中寝ている気もする。しかし、起きられないものは起きられない。それに今日は精神疾患からくるものだけではなく、風邪気味というものなのだ。精神疾患に風邪気味が加わるとどうなるか。より動けないのである。もうおれは常人とは違うレベルのところで生きている。

そのおれが雨風の強いなか、歩いて出社した。昼過ぎだ。トンネルを通過した。通過した先で、外国人らしき人を見た。詳細は書かない。でも、おれにはそれがラミレスに見えて仕方なかった。いや、ラミレスだろ、と思った。

ラミレス。

アレックス・ラミレス

ヤクルトから巨人、巨人から横浜。横浜で監督。ラミレス。今も横浜にいるのか?

おれは職場に着いた。iMacを立ち上げて、まず調べたことは「ラミレスと横浜で遭遇することがあるのか?」ということだった。AIに訊くことではない。ググった。結果、ありそうなことだとわかった。

ああ、あれはラミレスだったに違いない。ラミレスなんだ。ラミレスだよな。もしも別人だったら、ラミレスそっくりさん選手権で一等賞を取れるだろう。ああ、おれはラミレスを見たのだ。いやあ、ラミレス、あんなところにいるとは思わなかった。いつでもラミレスを探しているわけではないけれど、ラミレスを見られるっていうのはいいことだ。桜木町ではないけれど、ラミレスはこんなところにいる可能性があったのだ。

だから、なんなのだ。ひょっとしたらラミレスそっくりさん選手権で一等賞の別人かもしれない。でも、おれのなかであれはラミレスということになって、おれはラミレスを見たということになったのだ。おれはとくべつラミレスの強烈なファンではないし、「ラミレス!」と声をかけることもなければ、「サインください!」ということもないのだけれど、会社に行こうとしてラミレスを見かけることはすごいことじゃないのか。

ラミレスを見た。すごい。これは、悪くない。有名人を見たら、なにがすごいのか? わからない。おれは少し前に、図書館に行く途中、出川哲朗らしき人物を見かけたことがある。調べたら、出川がいそうな場所だった。出川を見た。すごい。

横浜は、悪くない。

これが東京だったら、有名人をもっともっとたくさん見られるのだろう。だが、横浜は、ほんのわずかな確率でラミレスや出川を見かけるだけなのだ。それでも、まったくないよりはいい。

「ラミレスを見たんですよ」と上司に言った。上司は、「自分は昔、東京のカフェでラモス瑠偉を見たことがある」と言った。ラモスなら見間違えもないだろう。ラモスそっくりさん選手権一等賞の人でも、それはそれですごいのだ。

日常で、すごいことがもっとあったらな。