空の上のくにのお話です。小天使のピッピツィピーナは、いたずらが大好きでした。にんげんのくにに降りてきては、にんげんのちいさな子どもたちにちょっとしたいたずらをするのです。とくにすきないたずらは、ちいさな子どもたちに、トマトがこわいかいぶつに見えるようにすることでした。にんげんのちいさな子どもたちは、そのせいでトマトがこわくて、だいきらいになってしまうのでした。
「あはは、トマトなんてこわがってて、かわいー。ざーこ、ざーこ」
ピッピツィピーナはにんげんのちいさな子どもたちをたくさんトマトぎらいにしました。
ある日のことです。空の上であたらしいいたずらを考えていたピッピツィピーナは、中天使のアグリコミューネに呼ばれました。中天使は小天使よりえらいので、ピッピツィピーナはすこしこわがりながらアグリコミューネの屋敷にいきました。
「ピッピツィピーナよ、あなたは子どもたちをこわがらせて、野菜ぎらいにさせているという話ではないですか。わたしは農業をつかさどる天使です。わたしのもとにも苦情がおしよせています。いいですか? もうそんないたずらはおやめなさい」
「もうしわけありませんでした、中天使さま。これからはみんなが野菜好きになるように協力いたします」
ピッピツィピーナはとてももうしわけなさそうな顔をして謝って、屋敷を去りました。
けれど、一週間経つと、ピッピツィピーナはこんなことを考えるようになりました。
(アグリコミューネさまが中天使だといっても、しょせんは農協天使じゃない。そういう中間組織が空の上のくにだってだめにしちゃうんだから。だいたい、ちいさな子どもなんてもとから野菜が苦手だもの。うまく食べさせられないのは農家の努力不足にほかならないわ!)
こりないピッピツィピーナはまたにんげんのくにに降りると、保育園でおひるごはんを食べているこどもにいたずらをしようとしました。
すると、うしろから声がしました。
「いたずら天使だ! アグリコミューネさま!」
それは、保育園にトマトをとどけようとする農民でした。
また悪事がばれたピッピツィピーナは、大天使の法廷に呼び出されることになりました。アグリコミューネさまが、さらに上の農林水産天使に話をとおしていたのです。
「ピッピツィピーナよ、そなたの行いは空の上にはふさわしくない。冥府におちてとこしえにトマトを食べるがいい」
「え、そんな、厳しすぎるのではなくて!?」
そんなピッピツィピーナの声は通りませんでした。冥府におとされたかわいそうなピッピツィピーナは今日も地獄の川のかたわらでトマトを煮たものを食べています。
にんげんのくにの子どもたちは、ちょっとだけトマトが好きになったとのことです。よかったですね。