戦闘民族日本人がまた髪の話してる……『カミが見ていた世界の歴史 魔女の黒髪 天使の金髪』を読む

「なんで日本人はちょんまげなんて珍妙な髪型をしていたのだろう?」という疑問は昔から持っていた。持っていたが、べつに喫緊の課題というわけでもなく、「お前も元服したのだから」という話もなく、放っておいた。

放っておいたところで、やはり何十年越しに気になって検索したりした。あるいは、その話題が目に入ったのか。よく覚えていない。覚えていないが、おれの読書リストに次の本が入った。

 

魔女の黒髪 天使の金髪―カミが見ていた世界の歴史

魔女の黒髪 天使の金髪―カミが見ていた世界の歴史

  • 作者:夏森 恩
  • 発売日: 1994/11/01
  • メディア: 単行本
 

これに、ズバリの答えがあった。むろん、「※諸説あります」かもしれないが。

チョンマゲの「まげ」を載せる剃りあげた部分は、丸い月の形から「月代」と呼ばれ、既に源平時代から行われていた。武士が戦闘中にザンバラ髪になったとき、髪の毛が顔に垂れ下がっては、相手と戦うときに大きな障害になると分かったからである。この風習は戦国時代に定着し、江戸時代には社会全体に広がった。三百年近い間、世界中に見てもまことに不思議な日本男子のヘアスタイルの定番となったわけだ。

Wikipediaなど見ると「兜をかぶったときに蒸れる」などという説もあるが、おれは断然髪が邪魔説をとりたい。

「チェストん時に髪を剃っておくんは女々か?」

「名案にごつ」

たぶんこんなんで、世界史史上、辮髪なみに変な髪形が誕生して、三百年やっていたのだ。そっちのほうがおもしろい。妙に戦闘民族な日本人らしいような気がする。日本人が戦闘民族って、なんかこう、個人格闘技を「道」にしちゃって世界に広めたりする、そういうところだ。しばらく前には、なぜか大晦日に何個も格闘技大会やっていたり、ちょっとなんかそういうところがある。中国人から見たら東夷というか、そういうところだ。

これをペリーに言わせればこうなる。

「ほとんどの日本人は無帽で、髪を剃り落とした頭のテッペン(=月代)をさらし、周りの毛を長く伸ばして硬い油で固め、それを結んで、剃り上げたテッペンの部分にしっかり留めている」

へんな民族だ。一方で、おれの雑な日本人観というのは、アフリカから出てきて、その土地、その土地に馴染めず、追い出されて、逃げて逃げて東の果ての、もうこれ以上は無理というところまで来て、ようやくなんか落ち着けるところにたどり着いた人類の末裔というものだ。でも、その割に、やるときは悪い方向にもやってしまう戦闘民族だ。そのあたりで行った蛮行で、中国や韓国に嫌われているのかもしれない。普段はおとなしいが、キレるとなにするかわからんでごわす。そんなところだ。むろん、こんな大雑把な擬人化で一つの民族や国家を表せるものではないだろうが。

でも、チョンマゲ頭については、そんなところでよくね? というところ。というところで、おれは本書で得たいものを得てしまった。表紙をめくったカバーのところに書いてあったからだ。

で、本書、なんというか、非常に「ああ、これって……バブル時代?」というものであった。どうもアートネイチャーの広告記事として日本経済新聞に七年連載されていたものである。1987年から1993年まで、だ。なんというか、今のコンプライアンス的にはちょっとアウト? という物言いもあるし、ともかく時代を感じるのだ。その時代の具合というのが、あまり読んだことのないものであって、「うーん、いやー」とか言いつつ読む感じになったわけである。ある意味で、貴重な読書体験ではあった。

あと、気になったところ。

「髪は長い友」と民明書房の本にあったと思うが、「友」は「発」の簡略化した形なんだって。

以上。

DX殿様かつら