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おい、『シン・ゴジラ』おもしれえぞ!-「思ってたのとちがう……」と子供はいうけれど-

映画 感想文

※ネタバレあるかはわかりません。

shin-godzilla.jp

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前提条件

おれは怪獣映画というものに興味はない。小さいころに観たような記憶はあるが、さっぱり覚えていない。ゴジラにもメカゴジラにもビオランテにも縁がない。また、それゆえにハリウッド版のゴジラも観たことがない。前日にそのハリウッド版をテレビでやっていたので、これ幸いと見ようと思ったが、気づいたら寝ていた。ゆえにおれはこのゴジラが(物心ついてからの)ゴジラ初体験といっていい。

そのゴジラ初体験の作り手はといえば庵野秀明である。おれはエヴァンゲリオンの世代であり、新劇場版の続きを望むものである。それゆえにこの話を知ったときには「え、ゴジラやるの? EVAの続編は?」と思ったものである。

が、次のニュースを読んで、おれは映画館に行こうと思った。

シン・ゴジラ役は野村萬斎だった 329人目のキャストが判明 (オリコン) - Yahoo!ニュース

狂言師野村萬斎(50)が、映画『シン・ゴジラ』に出演し、シン・ゴジラを演じていることが29日、明らかになった。

北京原人の正体は本田博太郎」 以来の衝撃である。いや、意味わからんが。意味わからんが、心がウパーっとなって行く気になったのだ。

「思ってたのとちがう……」と子供はいうけれど

して、『シン・ゴジラ』おれが知っている庵野秀明のEVAのスタイル(はさらにそれ以前に存在した日本映画、特撮映画などを踏襲しているのだろうが)丸出しという感じで、EVAで描かれている、「戦略自衛隊と外国とネルフの政治的抗争」みたいな側面がベークライトどばどば状態にあふれていて、矢継ぎ早の字幕、早口言葉かという長台詞、なにもかもいい感じだった。

前提で述べたとおり、おれはゴジラのネーミングではなく庵野秀明の四文字に引かれて映画館まで来た人間である。ひたすらに会議、そして、次々出てくる自衛隊などの兵器、ぶっ放される弾薬、なにもかもナイスだった。ベリ・ベリ・ナイス。おれは非常に満足した。このあいだ映画館で爆睡したので、そんな心配していたのだけれど、杞憂に終わった。画面から目が離せなかった。大勢のキャストの中に、おれが「この人が出ていれば面白そう」リスト(大森南朋新井浩文など)の名前はなかったけれど、たいへんよかった(とくに市川実日子さんがよかった)。

して、よかったよかったと座席を立ち、ぞろぞろと劇場を後にする。おれの前に父親と子供の二人連れがいた。子供は小学校低学年くらいかと思う。その子が父に向って言った。「思ってたのとちがう……」。よつばがパウンドケーキ出されたときのような台詞に、思わず笑いそうになった。そうか、そうだよな少年、君はもっとゴジラが大暴れしたり、他の怪獣と戦ったり、ヒーローが超兵器を使ったりするのが見たかったんだよな。兵器じゃなくて重機だものな。そう思った。そう思ったが、これはこれでひとつの経験だ。やがてエヴァンゲリオンに引きずり込まれるがいい。

3.11後の日本人として

さて、どうしてもやはり意識せざるをえないのは3.11であり、その後の原発問題である。予告編映像を見て、どうしても当時の東電の会見などを思い起こさずにはいられなかった。本作中で「ゴジラ」という言葉は検索エンジンで1件ひっかかるくらいの未知の言葉らしいが、はたして3.11があった世界なのかどうかはわからない。とはいえ、観ているこちらとしては(さきほどの少年はわからないが)、やはり自動車が大量に押し流され、放射線が飛び交う事態というと、3.11を意識せざるをえないのだ。

そのうえで、この映画は何をどう描いたのか。それは危機をあらゆる方法でのり切ろうとする人々の姿であり、それはむしろ現場というより会議室で行われているそれであった。現場感が薄いといえばそうだろうが、むしろ会議室を描いたところになにかがあるようにも思える。たとえリーダーがいなくなっても次が用意されているというシステム。なんだかんだといいながらなんとか完全なる崩壊を逃れる日本。あるいは日本人。責任の所在が明らかではないとかそういうところを、むしろ肯定的に描いているのではないかという感があって興味深かった。

そして、もう一つ気になったのが、ゴジラの出現場所である。ずばり首都圏、東京である。横浜沖に現れ、一度もどり、再度、わが母校にゆかりのある「真白き富士の嶺」の銅像を前景に江ノ島あたりに出てきて、御成通り(おなり・どおり/鎌倉には御成小学校というのだってあるのだぜ)から洋光台あたりを通って……。

記者の会話。東京の、首都圏の人口、GDPの話。これである。おれは正直、3.11の直後、日本はもっともっと大変なことになると思っていた。が、現地の当事者には申し訳ないが(今も苦しい暮らしを余儀なくされている人たちもたくさんいるだろう)、予想以上に自分の日常というものが回復していくのに驚いた。あるいは、日本の日常というものが。もっとも被害の大きかった場所が、首都圏に比べれば人の少ない東北だったから? などと思ってしまう。が、ゴジラは東京に現れる。首都圏直下大地震? などという比喩も脳裏をよぎるが、それが作り手の本意かどうかは知らない。

最後に、I MAXすげえな

最後に、IMAX上映のすごさというのをメモしておく。さすがに普通料金よりいくらか高くとられるだけはある、といえる。おれは映画を前の方で観るのが好きなのだが(背も低いし)、巨大スクリーンを前に「前すぎたか?」と思うほどであった。結果的にはちょうどいいくらい、であるが。音も多分いいと思う。そりゃまあ、総火演での10式の実音というほどじゃあないけれど(←自慢)、腹に響くものがあった。もし、『シン・ゴジラ』をIMAXで見られるのであれば、数百円上積みして選ぶ価値はあるように思える。とはいえ、スクリーン広すぎて左右に字幕出されると、追うのがちょっと面倒だったのだけれど。

と、それ以前にそんな大スクリーンで繰り広げられる映像にちゃちさがなかったいうのもすごいのだ。そうだ、なんかすっかり物語に没入してしまったけれど、映像、そして場面場面を繋いでいくセンス、そのあたりはすげえんじゃないでしょうか。ようわからんけど。

ま、そんなわけで

おれは『シン・ゴジラ』を楽しんだ。満喫した。なんならもう一回行ってもいいくらいに思った。長年にわたる特撮ファン、ゴジラファン、あるいは庵野秀明ファン(おれはほかの庵野秀明の実写映画をひとつも観たことがない)にとってどうだったかはしらん。おれとは関係ない話である。以上。

 

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まあ、あんまり特撮興味ないといいつつ、こんなんには出かけたりしてるんだけど。

 

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あんまり関係ないけど、この「全身漫画家」というのは原一男監督の『全身小説家』からとったわけであって、その原一男が『シン・ゴジラ』三人目の御用学者として出てきてておかしかった。

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