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セミを肩に乗せて自転車を漕ぎ続けたことがありますか?

通勤。細い路地から車道へ。電動アシスト付きクロスバイクに乗ったスーツ姿のサラリーマン(単にそういう格好をしている休日中の漁師である可能性もあるが)が通りすぎる。その後につづく。電動アシスト付きクロスバイクというのはどういう乗り心地なのかしらん、と思ったその瞬間、左肩のうしろにバタバタバタ! なにかに取りつかれる。なにか? いや、一瞬でわかる。セミである。セミはおれのすばらしいtimbuk2のバッグのショルダーあたりにつかまって「ジジ……」とか音を出している。払いのけたい、払いのけたいけど、自転車運転中。速度を落として、ちょっと右手を左肩あたりに手をやってみる……と、またバタバタ! となって、今度は右肩の方にとりつくではないの。で、また「ジジジ……」とかいうモードになってる。

このまま放射火炎を……じゃない、ミンミン鳴かれたりしたらどうしよう。【不審者情報:肩にセミを乗せた不審者が自転車で走行するという事案が発生】とか警察の地域安全メールで一斉配信されてしまうかもしれない。ということで、いったん停車してしっかり払いのけることにする。払いのけるにしても、潰さないていどにやさしく払いのけなくてはならない。朝からセミを素手で潰して大笑い、という器量の大きな人間じゃあないのだ、おれは。え、器量の大きさってそういうものではないの?

んで、こわごわと右肩に手をやってみると……反応がない。え? 今の今まで右肩に感じていたセミの存在は? じゃあ左肩? と手をやってみても反応がない。そーっと背中をなでてみても反応がない。【不審者情報:道脇で自分の背中を撫でる不審者が目撃されるという事案が発生】。

なんだかセミにとりつかれたような気持ちのままおれは自転車を漕ぎだした。どうにももぞもぞする。飛び去るときもバタバタバタ! の気配があっていいはずだ。

そのまま会社につく。自転車をとめる。ライトを取る。ロックをする。そして肩を、背中を触る。そーっとメッセンジャーバッグのショルダーを外す。よかった、ぺちゃんこになったセミの死骸は落ちてこない。職場に入る。社長がいたので、「おれの背中にセミはいませんか?」と聞く。「いないようだが」と言われる。これで昇給は間違いなしだ。

 

 

そんなやりとりをしていたら、「ヤマトでーす!」。

 

というわけで、おれはまただれかにお恵みをいただいた。あるいは、セミの精霊が、おれの気遣いに対して贈ってくれたのかもしれない。エンターキーを押すために、どれだけのセミがキーボードに突撃して犠牲になったのだろうか。それを考えると少し胸が痛む、夏の日である。

 

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