おれも『十三機兵防衛圏』の良さについて語ろう

十三機兵防衛圏 - PS4

『十三機兵防衛圏』公式サイト

 

 

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第561回「『十三機兵防衛圏』の凄さについて」 - 4Gamer.net

毎年、年末年始にゲーム一本やろうかな、とか思うんだよな。

2019/12/19 15:23

おれは昨年の12月19日にこんなことを書いた。「思うんだよな」ということであって、毎年年末年始をゲームに費やす、という習慣はない。だいたい普段見ないお笑い番組を見て大笑いして(普段見ない反動)、ダラダラ酒を飲んで終わってしまう。が、この『十三機兵』、どうも面白そうだ……。

というわけで、有馬記念で勝ったのもあって、ダウンロード購入してしまった。してしまった以上はやるしかない。

……結果、おれの2019年末~2020年始はほとんど『十三機兵防衛圏』によって占められたといっていい。おれはこれだけのことをもって未プレイの人に『十三機兵防衛圏』をすすめることにしたい。以上。

というのでは、多少、というかおおいに傲慢というか、いい加減というか、投げっぱなしということになってしまう。プレイした人にはわかるだろうが、内容については触れにくい。それでもなお、なにを語ろうべきだろうか。

本作は、まずSFである。それも、かなり本格の。ハードの。おれはフィリップ・K・ディックをはじめとして、いくらかSFを読んできた人間であるから、あるていど理解できているという手応えはあった。それでもなお、本作は深く作り込んであるし、ゲームならではの見せ方、読ませ方をしてくれるのである。エンディングを見終えたあとの今でも、「けっきょく【自己検閲】ってことでいいのかな?」とかいう部分も残っていて、今後考察サイトや他の人の感想などを見ようと思っている。だからこそ、「SFはちょっと……」という人ならば、逆にさらにの衝撃があるやもしれない。ぜひ、やるべきだ。

深く作り込んである本作は、『十三機兵』の名の通り、十三人の少年少女の物語である。群像劇というのは少々違う。それぞれが、なんというか、絡み合って、謎と謎とが繋がり、人と人ともつながり、たいへんなことになっているのである。正直、13人、さらにプレイアブルではないキャラクターを足したら20人近く、これには多少混乱しても仕方ない。とくに、最近、現実でも二次元でも人の顔と名前が覚えにくくなっている老いたおれには厳しい……かと思いきや、中盤にいたる前にはしっかりわかってくるのだから(もちろん、物語の本質として【自己検閲】なので、はじめは顔と名前くらいだが)、キャラが立っているといっていいだろう。

そんでもって、どのキャラも「これはこういうキャラね」としてティピカルに設定されていない、のだ。いや、もちろんいくらかはそういう面があるのは避けられないが、やはりそれぞれの【自己検閲】という要素もあって、深みがある。主人公らしい主人公となると、やはりパッケージでメーンの場所にいる彼ということになるだろうが、彼は【自己検閲】なのであって、一筋縄ではいかないわけだ。

それに恐るべきことだが、女性キャラも「おれはこのキャラが一番好みだな」というのが決められない。いや、そんなことを真面目に考えている四十路男というのは気持ち悪いだろう、というのはおいといて。だってもう、みんな魅力的なのだもの。これが恋愛ゲームだったりしたら、迷ってしまってどうしていいかわからないだろう。沖野くんということになるだろうか(わりと本気で)。

で、戦闘パートはどうなのか。これは意外に楽しい。「機兵」や敵がリアルなグラフィックで……ということは一切ない。グラフィックという意味では、人物を操作するアドベンチャーパートの、執念すら感じる手書きドット絵的な方に全振りしているといっていい。戦闘パートは、下手すればスーパーファミコンですらできてしまうような、シミュレーションバトルになっている。が、これはこれでおもしろい。こちらに想像の余地というものを与えてくれるし、ゲームとしても一種将棋のような面白さがある。ちょっと人選と戦術を間違えるとボロボロになるし、一方で、うまくはまれば短手数で討ち取ることができる。そのバランスよな。ちなみに、戦闘パートではお気に入りキャラというのが出てきて(乗り込む機兵ごとに武装が違う)、やはり緒方と鷹宮に頼ることが多い。

あと、たぶん最初はみんなアドベンチャーパートやるだろうし、そこでなんとかポイントが貯まるので、あんまり貯め込まないで使いまくっていいと思う。とくに、強い兵器はとっととMAXまであげちゃっていいんじゃないだろうか。おれは「最後までエリクサーを使わないタイプの人間」なので、ポイントも盛大に余らせてクリアしてしまったが。あと、2つくらいネットの攻略サイトに頼ったのは告白しておく(そういうサイト見るときにはネタバレ見ないように注意してね)。おれはなんとなく全員均等にレベル上げてしまったが、べつにそうする必要があるかどうかというと、あまりないかもしれない。そこんところもお好きなように。そうだ、アドベンチャーパートは一本筋なのに対して、こっちの戦闘パートは自由度が高いといえば高い。力押しするもよし、補助兵器を駆使するもよし。

で、ほとんど切り離されたアドベンチャーパートと戦闘パートがやはり絡み合って、「そういうことか」と思うところもあり、そもそも【自己検閲】なんだよな、ってことになる。

そして、クリアして、いろいろなあれやこれやがそれはそうなのかということになったときの満足感というのは、これはもう「プレイしてよかったー」としか思えない。最初から最後まで、隅々まで行き渡っている。唯一、唯一不満があるとすれば、それぞれのアドベンチャーパートのラストはみんな【自己検閲】で決めてほしかったかな、とか、その程度。

まあともかく、おれはものを褒めるというのは基本的に苦手な人間であって、書けば書くほど、「魅力、伝わってねえかもなあ」と思えてしかたない。仕方ないけれど、正月休みの最後の日に終えて、「おお、おお、おれは久々にゲームをやった!」という気になって、読もうと思ってた図書館で借りた本も読めなかったけれど、そんなのはどうでもいいんだ。ともかく、「今どきのゲームは複雑で難しくて」というような人も、このゲームは大丈夫だ。「今どきのゲームは複雑で難しくて」というおれが言うのだから間違いない。そして、13人の、いや、もっとたくさんの人間の物語に浸ってほしい。ほんと、いや、いいゲームだった。まだまだ語りたいことはある(1985年という、おれが「物心ついた」と思っている年が舞台であるとか、BJの感じとか……)。でも、もういいだろう、とっとと買え、プレイしろ。以上!