西田雄一郎について

 今週はフェブラリーステークスということもあり、週刊Gallopを買った。すると、騎手をテーマにした連載だろうか、番外編として西田雄一郎元騎手が取り上げられていた。西田といえば、えらいスピード違反をやらかしたうえ、出頭拒否で裁判沙汰→騎手免許返上という強者である。
 が、どうもこの記事を読むに、出頭拒否は誤報であったという言い分のようだ。なんでも、新潟でスピード違反を犯しそれが無人監視システムで撮影された。出頭要請があったけれど、その日は調教日だったので「今度また新潟の交流戦に行くので、その時にしてくれ」と担当者に連絡。それが了承されたのもつかの間、直後にもう一度スピード違反で御用というわけらしい。果たしてそれが「出頭拒否」よりマシな話なのかどうかよくわからない。
 その後、西田は自ら免許返上の後、ノーザンファームに勤務。牧場仕事や調教に携わりつつ、美しい伴侶なんかも得たり。で、五年の禊ぎが終わったということで、再び中央の騎手になるべく試験を受験。マスコミの報じかたや身内に徹底的に甘い競馬界の体質から、おそらく合格は確実だろう。晴れて中央騎手西田雄一郎様におなりあそばすわけだ。
 やや皮肉っぽく書いたけれど、このギャロップの西田寄りの視点で書かれた記事を読んだ後ですら、彼の復帰を喜ぼうという気にはなれない。それは、この記事を読む限り、いや、他のインタビュー(http://www.sanspo.com/keiba/top/ke200502/ke2005020907.html や http://www.sponichi.co.jp/horseracing/kiji/2004/10/21/05.html)を読んでも、彼の視線が内輪のウマ社会にばかり向いているという印象を受けるからだ。すなわち「ファン」の「フ」の字も出てこない。別に騎手は馬の力を出し切ってさえくれればいいのは確かだ。ただ、応援するファンあっての競馬であることも確か。西田とて四年そこらで九十五勝の勝ち星を重ねた騎手だ。彼を応援するファンだって居たろう。俺だってサクラエイコウオーは見事なもんだと思ったもの。しかし、西田はあまりそちらに向けて、記事になるほど多くを語ろうとはしないのだ。その内輪重視の考え方こそ、かつて彼をして反社会的行動に走らせた原因ではなかったのか。そんな風に勘繰りたくもなる。
 もう一つ、あまり歓迎したくない理由がある。それは、多くの地方騎手の存在だ。今回も同じく笠松柴山雄一騎手が受験したことが話題になったけれど、全国には過酷な条件の中で馬に乗ってる腕っこきがたくさんいる。そして、競馬場廃止で「たくさんいた」になりつつある現状もある。そんな中、あっさり西田が恵まれた中央の乗り役に復活かよ、という気持ちだ。何やら釈然としないのだ。
 もちろん、彼とて多くの厳しい目の中に晒されるのを承知で出てきたんだろう。だから俺は敢えて厳しいことを書いた。たぶん、こんなものが本人の目に届くことはないだろうけど、厳しい目があるということをネットの片隅の個人的な日記に記しておいて悪いことはないだろう。あと、ノーザンファームの馬に西田が乗ってきたら注意だな。これも忘れずに覚えておこう。妙味薄そうだけれど。