さて、カープの貯金が一つだけになってしまったわけだが

 おかしい、シーツと金本が打ちまくっているのにカープが負けている! いや、目を覚ませ。全てはまやかしだ。カープカープであってカープではない。自己同一性の崩壊とともに不可侵の領域である山本浩二の永続的な失墜を生じ、カープカープ自身の創造に対して不可触になったのだ。ビッグレッドマシーンは檻の中に閉じ込められた邪悪な山羊に過ぎない。黄金の投手陣も、脚を使った野球も全てはカープファンの無智と狂気が産み出した恐怖の概念規定である。しかし、復活を意味する三の数字と四の完全性の上に成立する野球場の中において創造の根源が尽きることはない。投射された幻影の中には万物の可能性を包括するのである。即ちそれは九十一年の佐々岡の投じたボールであり、ベースを駆け抜ける前田の健脚だ。回転のうちに非存在性の有機体が陰と陽に分かたれ、己を知りたいという欲求からカープに<生>をもたらすのである。おお、東出はあらゆるゴロを内野から外に漏らさず、新井の打球は空を撃ち抜き曙の明星をむなしい亡骸にするであろう!栄光の旗よひるがえれ、カープカープカープ広島、広島カープ