いつか見た天皇賞のこと

 もしもこのまま忙しくて、日曜日に職場にいるはめになったら。職場にはテレビがない。伊勢佐木町石丸電気にでも行かなければならない。いや、そこまで行くなら桜木町の場外へ行くのも一緒か。
 バブルガムフェローが勝った天皇賞・秋。高校の文化祭を競馬好きの友人と連れて抜け出して、商店街の電器屋で観戦した。「ワイドテレビだとサラブレッドの脚が短く見えるなぁ」などと言っていた覚えがある。そういえば、ダンスパートナーが出た菊花賞、すなわちマヤノトップガンが勝った菊花賞は、修学旅行と重なっていた。ちょうど熊本城あたりで、俺は携帯ラジオで実況を聞いたのだった。この二つのレースは馬券なんて買っていない。それなのに、なぜかその時の情景とともに思い出される。
 とはいえ、日本ダービーは家で観たい。発泡酒ではない、ちゃんとしたビールを開けて、テレビの前で正座する。俺はそう決めたのだからそうする。俺がダービーを観るのを邪魔するならば、親だろうと仏だろうと鬼だろうと斬って捨てるぜ。……などと意気込みながらも、中央のG1を競馬場で観る気にはこれっぽっちもなれないのだから説得力もない。しかしあれは、若い人にしか耐えられないように思う。俺も若いときがあった。しかし、今はもうだめだ。