流れよ我が涙、と短距離走者は言った

http://www.nikkansports.com/ns/sports/f-sp-tp0-050615-0002.html

男子100メートルで、アサファ・パウエル(22=ジャマイカ)が9秒77の世界新記録を出した。02年、ティム・モンゴメリ(米国)が出した9秒78を0秒01塗り替えた。

 このニュースには驚いた。その扱いの小ささに。しかし、ティム・モンゴメリさんのレコードについても知らなかったのだから、そんなものなのだろうか。そんなもの、と思ってしまうのは、どうも小さな頃の記憶があるからだ。すなわち、カール・ルイスベン・ジョンソン。人類がどこまで早く100mを駆け抜けるのか。何か子ども心に100mだけは特別な競技のように思えたものだ。そして、今もその感じは残ってる。というか、やっぱり100m決勝は大会の花形だから、世界的にもそうなんじゃないか。なんであまり話題にならないんだ? 
 そこで俺は、こんなことを考えた。もう、あまり世界新記録の話をしたくないんじゃないかと。アスリートのトレーニング方法や走法の進歩、さらにシューズやトラックの科学的進歩。それらによって記録は伸び続けてきた。しかし、いつか必ず限界が来る。生身の人間が100mを5秒で走りきるのは絶対に無理だろう。だから、「そろそろか? そろそろか?」というような不安があるのではないか。もちろん、こんなのは陸上なんてこれっぽっちも知らない俺の戯言だ。それよりも、アサファ・パウエルのこの言葉の方が魅力的なのは間違いない。

人間がどこまで速く走れるか、誰も分からないことを示せたと思う