われわれの間に身重く横たわるもの

http://www5.big.or.jp/~hellcat/news/0507/05a.html

爆発の衝撃で、彗星の軌道とそれに関係するすべてが変化するのは明白です。私の占星術ホロスコープが狂ってしまったんです。

 シーザリオに話題を持っていかれたかと思ったら、ちゃんと話題を用意していたディープインパクトは稀代の名馬である。……という話ではない。NASAの実験に占星術師が怒ったという話。果たしてこれは一笑に付すことのできる話であろうか。
 このニュースを読んで、俺は藤原新也が書いていたことを思い出した。かつてアポロ11号が月面着陸した際に、藤原はどこかイスラム教の国に居たという。そして、例の映像を見たイスラム教徒は怒っていたという。彼らの崇める月に、アメリカ人が土足で踏み込んだからだ。
 俺は、それもこれも笑えない話であると思う。いや、笑ったっていいけれど、単に笑い飛ばすわけにはいかないように思う。我々の文化・文明の尺度から言えば、彗星に爆弾をぶつけて物質を解明する行為なんてのは、朝起きてパンを食べるくらい当たり前のことだ(本当か?)。しかし、そうでない人もこの世界にはたくさんいる。単に西暦という暦の上で世界は同時代にあるけれど、実際のところ同時代だなんて言えるのは一部だけに違いあるまい。
 もちろん、世界中のあらゆる尺度に物事を合わせるわけにはいかない。しかし、この世のどこかに違った尺度が存在するという意識は必要だ。意識の上で、なおかつやるべきことをやっていかなければならない。結果的には同じ事になろうが、意識のあるなしは大きい。この件のロシアの占い師がどれだけの真摯さを持っているのかはわからないが、このような事柄について鈍感であってはならないと思うし、また、我々の文化が踏まれたときには声を出す必要もあるように思えるのだ。