スイカを食べた

 今しがた三時のおやつにスイカが配られた。夏の風物詩とも言えるこの果物、僕にとっては初物であった。 
 食べながら思ったのだが、スイカの食べ方も人それぞれである。「スイカなんてのはね、しゃくしゃくしゃくっとかぶりついて、タネをプッと吐いちゃえばいいんですよ」という人から、「私は食べる前に全てのタネを取り除いちゃいますね」という人、あるいは「タネが本体で赤いのはオマケ」などという強者もいるかもしれない。いや、いないか。
 僕のスイカの食べ方は、「タネを先に取っちゃう」派に近く、スプーンで目標地点を慎重に削ってタネを除け、それから果肉に取りかかるというもの。はっきり言って優柔不断でちまちました食べ方であろう。少なくとも、女性にモテるタイプでないのは確かだ。
 そうなってしまうのも、やはりタネを食べたくない一心からだ。小さなころ「スイカのタネを食べると、おへそから芽が出る」と言われたのが影響しているのかしていないのかわからないけれど、とにかく食べたくない。誤って飲み込んでしまうと、のどのあたりにいつまでも異物が詰まってるような気になる。
 というわけで、実のところ自分は「スイカ食べない派」なのだ。タネを前に気にしないで食うわけにもいかず、かといってじくじく作業をこなしながら食べてもつまらない。先にタネを取ってしまうのはいささか子供じみているし、ボロボロのスイカは美味しくなさそうだ。こんな煩悶を前に、スイカを食べる気はなくなってしまう。
 子どものころは「将来全てのスイカが種なしになるんじゃないか」という希望も抱いていたのだけれど、二十一世紀になってもその様子はない。出されれば食べるが、やはりスイカは苦手であった。「スイカ味の○○」という類もたいていのところあまり美味しくはないし、どうにもイメージの割に僕からは遠いところにある果物と言えるかもしれない。夏は僕にも訪れるというのに。