三分間ファイト

 睡眠時間二時間弱の今朝、テレビのチャンネルを変えていたら馬が映った。NHKの朝の連ドラ『ファイト』だ。時刻は八時二十七分。そして、俺は三分間の間に混乱してしまった。話が見えてこない。サイゴウジョンコって牝馬で重賞とか勝ってるんじゃなかったっけ? 予後不良級の怪我でも無さそうなのに処分?
 出社後、『ファイト』を見ている人にさっそく聞いてみると、逆に質問されてしまった。その人は俺からちょぼちょぼと影響を受けて多少競馬を知っているくらいなのだが、「こんなことってあるの?」と。いや、全くその指摘は正しい。いかに血統が悪くても、繁殖に上がれないはずがない。脚本家は取材というものを一切しないのだろうか。たとえ専門家じゃなくても、‘数年来の競馬ファン’程度の人にちょっと話を聞くだけでも、こんなストーリーにはならない。あるいは、常識で考えられないことと知った上で、それでもこういう話にしたいんだ、というのかもしれない。が、それはあまりに逸脱しすぎでしょう。
 とはいえ、三つの意味であまり強く責められない。一つは、たまたま競馬だから俺が気づいたということ。『ファイト』に文句を言えても、他のジャンルではどうだろう。俺が「文句なしの出来」と思うような作品がでも、それが取り扱ってるジャンルのファンにとっては噴飯物の逸脱をしている可能性だってある。知らない人が楽しめればいいのではないか。
 二つ目は、「サイゴウジョンコは活躍した馬だから故郷に帰れるのはわかったけど、活躍しなかった馬はどうなるの?」という質問。いくら口を酸っぱくしてジョンコの処分はおかしいと言ったところで、競馬の一番ナイーヴな部分がクリアされるわけではないのだ。
 そして三つ目。そりゃもう、西原理恵子がタイトル画描いてて、主人公の本仮屋ユイカがかわいいんだから、それでいいじゃないですか、と。