さて、帰るか。

 俺はポジフィルムを八十五枚スキャンした。機械がうなりをあげて、次の四枚を要求する合間を縫って、一冊本を読んだ。うそだ。八十五枚スキャンした後、その本を読みふけって、気づいてみたら午前0時をとうに回っていた。これはよくない。だいたい、俺は本など読んでも「本→俺→」という具合に通過して、ほとんど残る物がない。残滓、みたいな感じ。せめて、もうちょっと多くため込めるか、効率よく取り出して、上手くカチッとくるところにはめ込むようにしたい。しかしそれは何か先天的な能力のような気もして、どうにもならないような気もする。となると、選別と貯蔵を一切合切アウトソーシングするのが効率よさそうだが、それを何に委ねるべきのか、あるいはその代価が何なのかもよくわからない。委託先を見つけられない以上、一を聞いて十を知るのが無理でも、十を聞いたら一残したい。そのくらいはなんとかできないのか。できたところでどうなるかもわからないけれど。