梅酒を飲む

http://www.hamadasyuzou.co.jp/product/denzoin/denzoin_list.html
http://www.asahibeer.co.jp/umesyu/8years/
 セブンイレブンで酒を買おうとしたときのことだ。俺は日本酒を買うつもりだったけれど、「くちまろ」という名前の梅酒の瓶が目に入った。細身の瓶にとろみある液体の入った感が実に美しく、思わずそれをチョイスした。俺は梅酒などまず飲むことはなかったが、デザインの良さに負けた。珍しく飲む梅酒はアルコール度数とは別の濃さがあって、まだ寒いのにロックで飲んだ。
 その「くちまろ」がほとんどなくなったときのことだ。次も梅酒を買おうと思ったが、次はその「くちまろ」の横にある梅酒にした。そのセブンイレブンの梅酒は二択だ。横にある方が「くちまろ」より二百円ほど安い。俺は何かを気に入っても、同じ物を二つ続けて買うことはあまりない。それに、もしもやすい方が美味しかったら、大損だ。
 そういうわけで、俺はその、アサヒとセブンイレブンの八年貯蔵の梅酒と「くちまろ」を飲み比べた。そして驚いた、あまりに違った。「くちまろ」の方が断然美味しく感じられたのだ、俺には。今後十回梅酒を買うとしたら、十回「くちまろ」を買うだろう。
 この差を何に求めようか。度数が高い方がよかったのか。やはりコイン二枚分くらいの差か。あるいは、「くちまろ」が無香料、調味料無添加だからなのか。思わず、最後の理由に飛びつきたくなるのは、いやらしいグルメの時代に生きるせいだろうか。まあ、原因などわからないが、俺の中で思わずぱっきり差が開いた。
 たかだか二百円差の梅酒でこれだけ違った。デザインの美しい物が勝ち、無添加を謳うものが勝った。これは偶然にすぎず、「くちまろ」よりはるかに美味の梅酒も世の中にはたくさんあろうし、それの値段も製造工程も偶然にすぎない。次の目安にはなるが、理由とするほどの材料にはならない。