佐藤隆騎手の死

http://sports.yahoo.co.jp/hl?c=sports&d=20060809&a=20060809-00000006-kiba-spo

 8日、4月25日の浦和5Rにおいて落馬し、脳内出血と診断され意識不明の状態が続いていた佐藤隆騎手(船橋・佐々木清明厩舎)が、午後11時23分に入院先の病院で亡くなった。49歳だった。

 パドックで若いカップルの女の方が「ねえ、ねえ、ここで走るの?」などと言う。心の中で「走るわけねえだろ」と思う。馬券を買い終わって、コースに一番近い柵によっかかる。横に、さっきと同じカップルがいる。嫌な予感がする。レースがスタートする。思いがけぬ馬がハナを切る。その馬の馬券を持っているらしいさっきの女が「そのまま逃げちゃえ!」と騷ぐ。心の中で「逃げ切れるわけねえだろ」と毒づく。
 しかし、その馬はそのまま先頭を走って帰ってくる。どの馬にも抜かせることはなく、レースを終える。横で女が大喜びする。俺は愕然とする。俺の本命馬が、俺のゴールドヘッドが逃げ勝つレースだったんじゃないのか。悪い夢だ。勝ち馬はハカタビッグワン。後に俺は、はずれ馬券の山から、ハカタビッグワン単勝を見つけて腰を抜かした。俺が生涯で一回だけ行った札幌競馬場で、あの馬と会って、馬券まで買っていたのだった。
 1998年、東京王冠賞ハカタビッグワンの鞍上は佐藤隆。当たり前のように記憶の中にあって、いつも見慣れている勝負服が、このような形で姿を消す。とても悲しい話だ。合掌。