アサヒライジング戦記

 俺はほぼ先週一週間にわたってアサヒライジングのことを考えてきた。本命はゆるがない。ただし、俺は清水成駿の信者であり、なおかつ今、成駿が乗りに乗っていることも承知している(何がすごいって、東スポ紙上では日曜の重賞にしか印を打っていない。一日全レースの印から的中を拾うのとは訳が違う)ので、それが怖かった。もしも成駿がアサヒに◎を打ってきたら、俺はどうなるのだろうかと怖かったのだ。マジに競馬と戦ってしまう。その度胸があるのか、という問いかけである。
 そして、フタを開けてみれば、否、東スポを開いてみれば、否、否、一面に載っていた清水の本命はカワカミプリンセス。そうきたか! そして、アサヒは▲評価。ただし、カワカミ―アドマイヤキッスは別格としての、がらがらぽん(走るたびに順位が変わる)の▲以下。しかし、これで俺は決心した、カワカミ―アサヒの馬連にブッ込むことを。そもそも俺はカワカミの評価にとまどっていて、前走など一見すごく見えたが、レースレベルはどうなのか。スイートピーステークス勝者の前例については、フサイチコンコルドダンスインザダークなど、本当に強い馬の場合は関係ないもの。そこに清水が「化け物まである」の評価なら乗ろう。そして、俺本命のアサヒと組み合わせて◎―▲ならいける。
 そういうわけで、アサヒとカワカミの馬連、そしてアサヒの単勝を本線にいって、他は回収できればいい、というくらいの馬連、三連複。ただ、百万円コースへの色気を出して、ブロンコーネなど絡めた三連単などまでちまちま買っていったのが優柔不断のところ。
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 さて、レース。ヤマニンファビュルがハナを切って、切って、なんと、先日「今どきテレビ馬もないだろう」と書いたのに、まさにそんな感じ。さすが昭和の名ジョッキーだった河内洋の馬? 関係ないか。そして、我がアサヒライジングは離れた二番手を進。ほとんど逃げているのと変わらない状況。ここらあたりの鞍上の判断もよかった。
 そして、コイウタの故障(大事に至らなくてよかった)と多少の混乱、後から考えれば逃げ馬に有利な要素だが、そのときはそこまで思い至らなかった。いつ、前を捕まえるのか、抜け出すのか……。そして、直線入り口で一頭抜け出すアサヒライジング、いいタイミングだ、いいぞ、と声にもならない。
 勝てる、勝てると思った瞬間つっこんできたのがカワカミプリンセス! 馬体が並ぶ、一瞬アサヒも抵抗するが、そこまで。しかし、そのまま、そのまま、粘ってくれ、俺にデジタル一眼レフとレンズ二本、女にバッグとコンデジ一台……! 
 が、無情にもフサイチパンドラに差された。どっから出てきたんだ。正直、テレビ馬になりかねないと思っていたのは、ヤマニンよりこっちだったのに。福永祐一オークスの舞台で侮ってはいけないのか……。
 柴田善臣はパーフェクトに乗ったと思う。思うのだから文句は言いたくない。最後に二着確保できないのは、彼のキャラであり、それを承知でこっちも馬券を買ったのだ。ただ、あれが内田博幸岩田康誠小牧太的場文男であったならば……と、ハズレ馬券を前に思ったのも確か(そう思って最終で岩田の馬券を買ってみたら、意地でも三着確保。単勝だったから意味ないが)。
 それはそうと、勝ったのはカワカミプリンセス本田優。四戦四勝でオークス制霸は見事。母系の血統が米国大物で溢れていたが、そこらあたりがズバッと来たのだろう、キングヘイローを介して。たいしたもんだ。フサイチパンドラについては、清水も無印だったし、俺もまったく考えていなかったので白旗。アサヒライジングはこれから先、距離短縮する秋はオークスより難しくなるかもしれない。牝馬のクラシック〜長距離馬となると活躍の舞台も限られようが(メジロランバダとかエルノヴァみたいな?)、それなりに見守っていきたいと思う。今回の舞台より適した舞台となると難しく、また、馬としても勝ち味の遅いタイプっぽいので、応援すると苦しみそうだが。
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 しかしまあ、クビ差で俺にとっての大金逃したとはいえ、終わった後はすっきりとした。買わなかった、買えなかった後悔よりも、買って負ける方がすっきりする。アサヒライジングの戦いに悔いはなかったろうし、俺も後悔はない。いつもこうとはいかないが、こうとなったら次は当ててみせる。