どなたの歌やら子守歌 極楽極楽ねむのさと

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060825ddm041040066000c.html

「看護師の内診は必要悪。やめたら明日から患者を診られない」。保健師助産師看護師法違反で神奈川県警に家宅捜索された堀病院の堀健一院長(78)は24日、報道陣に看護師らによる助産行為を認め、開き直った。

 俺はもとより「少子化対策!」などと言われると鼻白んでしまい、「少子化で結構じゃないか」と思ってしまう人間である(id:goldhead:20051007#p2)。過酷な勤務状況と訴えられる確率の高さから、産婦人科医が減ろうとへいちゃらである(id:goldhead:20060329#p5)。だから、このニュースを見て、「ここに入っていた妊婦たちは、タイシンリリィみたいに勝手に産めばいいじゃない。ナリタタイシンみたいに立派に育つかもよ?」と思った。
 ……と言いたいところだが、マイナスとマイナスが掛け合わされてプラスに転じ、この病院長を応援したくなった次第である。俺のマイナス思考に掛け合わされたマイナスは何か。マスコミの報道である。
 普段から少子化や産科医の減少を憂うようなことを書き飛ばしておいて、いざこういう件が持ち上がると、画面/写真に写る悪人院長を仕立て上げてぶっ叩く、その節操のなさ。だいたい、死亡したという女性は不幸であったが、それは看護師の内診(辞書によれば「直腸や女性の生殖器の内部を診察すること」)によって引き起こされたものなのか。84〜05年に全国で14件というのは、そんなに過大視するほどの数字なのか。開業40年以来違法というが、04年の通達とやらからの話ではないのか。そもそもお産は100%安全なものなのか。それらと比べて、この病院の40年の実績、年に2,000件の出産はすべて否定されるのか。……無知の門外漢(病院で女性の生殖器から出てきた経験はあるが)なので、誤った解釈だらけだろうが、ともかくこういう印象なのである。あれだけ産科不足と悲惨な状況を報じておきながら、こういう件にはスキャンダラスに飛びつくだけ。ちょっとブレーキ掛けて背景まで探る手間をかけない。もちろん、たとえば今朝の神奈川新聞の一面などはかなり同情的な論調であったようにも思え、程度差はあると思うが……。
 警察にしたって警察で、現にこの病院に大勢の妊婦が世話になっているなか、ここまで大事にする必要があったんだろうか。過失致死にできなかったけど、一人死んでいるということで、とりあえずこっちでやっておくか程度ではないのか。現況が本当に問題視すべきだとしたら、とりあえず指導という形はとれなかったのか(警察の領域ではなく、また、警察が罪を見逃せない事情もあろうが)。ともかく、これではますます産婦人科医のなり手がなくなり、また、世のまっとうな男女たちが子作りをためらうばかり。それとも、どこかの誰かがそんな世の中を狙っているんじゃないのかと妙な陰謀論すら浮かんでくる、少子化賛成の俺なのであった。