朝起きたら君は

 「朝起きたら巨大なイモムシになっていた」という経験は、誰にだって一度や二度あることだろう。だが、「昨年末あたりから正社員になっていたらしい」という経験となると、どうだろうか。なにせ自分の身分の話である。ある種、人生の一つの転機かもしれない。だが、それを年も明けて十日も経って、なんともない会話の中で聞かされ、ついでのように新しい保険証を渡されたらどうだろう。心機も一転しなければ、身をあらためようとも思わない。おまけに少ない手取りはさらに減るし、閉塞感と将来への不安は増すばかりで、どうにもイモムシのように縮こまってしまう。大企業どころか、中小ですらないのだ。会社の現状なんて、裏側を知り尽くしているのだ。でも、このご時世で、贅沢な話だろうか?