熱発

 俺というのは実に会社にとって都合のいい人間で、体調を崩すのはおおよそ土日。月曜になったらほらもうこうやって出社してるんだからえらいよ。熱はまだあるし、ノドは痛いし、だけれどね。医者には行きたくない。引っ越してからこのかた、歯医者と眼鏡のための眼科しか行ってない。医者が怖いとかそういうんでなく、「未知のところに行きたくない」という思いがものすごくつよい。子供が「お医者さん怖い〜!」とかいうのより重症だな。それに、金を払いたくない。保険くらいはどうにかなっているけれど。それでもう、なんとかどうにかなる。思えば、俺のようにいたらない人間が社会の片隅で一応食いっぱぐれなく生かされてるのだから、平日に風邪などひこうという了見があってはならない。まったくひかないならましだけれど、ひくなら休日にするのは当たり前のことであって、それができないということはいたっている食いっぱぐれの心配のない人間であって、それをしないというのは社会に自らを生かせて恥じぬ人のことだろう。なんかいってることが無茶苦茶だな、なあ、人のことはどうでもよくて、俺はどうにか週末に風邪をひきたいのだ。