栄光の旗いずこ

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071206-00000013-maiall-base

あぁカープよ 栄光の赤ヘル、いずこ 「鍛え、育てる」貫いて

 Yahoo!カープが好きなような気がする。気のせいでもいいけれど。そんなわけで、紹介されていた毎日新聞の記事を読む。ううむ、衣笠祥雄。一つの球団を貫く美学、と時代背景で言うけれど、それはあなたが特別な人になったからでは。盟友江夏豊はどうでしょうとか思ったりはするけれども。

カープは監督に外国人を招いた点でマツダと似ているが、経営は日本型。結果は好対照です。でも欧米張りに金を使えばカープは他チームと同じになり、ファンも素直に喜べない。松田元オーナーが言う『鍛えて戦って勝つ』を貫いてほしい」

 貫こうとしても貫けない。(初期投資の少ない選手を)鍛えて、戦って、勝つ。理想だ。だけど、それだけではサイクルしない。鍛える→勝つ→高く売る。これでなくてはダメだ。今では鍛えた物が敵に取られるだけだ。と金を取られて、金を打たれるようなものだ。勝負にならない。と金を取られる代償に、別の金か、と金になる寸前の歩を得るだけの見返りを取らなくてはならない。衣笠の言う「米大リーグにも、限られた予算で勝つチームはあります」のやり方だ。
 というわけで、やっぱり『マネー・ボール』的なやり方が思い浮かぶ。戦術面でのサイバーメトリクスは置いておくにしても、選手を駒と商品と徹底的に見なすやり方だ(もっとも、その査定において数字の適切な解釈は欠かせないのかもしれないが)。俺は、広島が広島としてのキャラを保ちつつ、今後も存続し、戦っていくには、それを取るしかないように思える。身売りによって金満オーナーを得るか、あるいは合併消滅以外には、それしかないように思える。
 ベテラン厚遇、コーチの椅子を用意することによる終身雇用……、結局チームを弱くしただけだ。やはり、売れるときに高く売る。それしかないのではないか。それによってバカスカ補強できる金満球団になれるわけではないが、優良外国人選手のサービス放流をふせぐことくらいできるだろう。
 「育てた選手を大切にしないのは、カープじゃない!」。もちろんそうだ。しかし、「育てた選手に大切にされなかったカープ」の現状から逃げてはいけない。黒田、そして、よりによって新井貴浩。新井ほど歩がと金に飛や角、竜や馬に成った例は少ない。おまけに広島育ちのカープファン。はっきり言って、新井に逃げられたら、どんな選手にも逃げられる可能性があるということだ。逃げられてはいけない、元も子もない。カープが選手に片思いしている余裕はない。
 そんな球団に有望選手が来るだろうか。結果がともなえば、問題はないだろう。カープが勝つ集団であること。それは何よりの魅力だ。おまけに、ステップアップの踏み台としてもいい。メジャー志望どんどんおいでだ。
 もちろん、勝つ集団であることが最大の条件。このやり方で間違えれば、もはやファンは残らない。新人も避ける。選手の入れ替わりが激しく、負け続けるだけの集団。こんなものは応援しない。というわけで、卵が先か鶏が先かわからない話になる。しかし、それしかないだろう。そういう方向しかないだろう。カープが生き残るには、戦うには、それしかないだろう。
 ……と、力んだところで、どうしようもないことの方が多い。『マネー・ボール』の感想に書いた通りだ。制度、市場、カープ自身の努力でどうにもならないことも多いのだ。しかし、俺は、にわかマネーボール信者になって、それにすがりたいほど、カープに危機感を抱いている。このままではジリ貧だ、と。
http://mainichi.jp/enta/sports/baseball/news/20071206dde012050002000c.html?inb=yt

 ああカープよ。金に飽かしてスター選手を取る、なんて、ほんとは一度でいいからやってほしいが、見果てぬ夢だ。どうせ見果てぬ夢ならば、映画「フィールド・オブ・ドリームス」で夜な夜なトウモロコシ畑から現れて野球を楽しむ冥界の名手たちのように、のびのびしたプレーで私たちを夢の中にいざない続けてほしい。

 毎日本サイトにあった、この論説委員の境地。この幽玄の境地に至るほど、俺はまだ老いてはいないのだ。でも、「ほんとは一度でいいからやってほしい」、俺も同感……。